薬物療法の有効性・安全性から合併症管理、生活習慣まで、糖尿病診療の課題は多岐にわたります。今回は、MASHを合併した患者に対するsurvodutideの肝線維化への直接効果や、高用量セマグルチド中止後のリバウンド抑制における漸減プロトコルの有効性、ビッグデータを用いた糖尿病経口薬の寿命延長効果の検証といった薬物療法の最前線に加え、糖尿病性腎症へのフィネレノンの有効性、尿ナトカリ比の季節変動、術後の無自覚性低血糖の症例など幅広く取材しました。 どう終える?高用量セマグルチドの中止戦略 肥満症治療薬であるGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名ウゴービ、以下、高用量セマグルチド)は、高い減量効果を示す一方、国内では投与期間が最大68週に限られており、治療終了後の体重再増加(リバウンド)が課題となっている。千葉大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科の丹羽美貴氏、診療講師の北本匠氏、診療科長の前澤善朗氏らは、高用量セマグルチドの中止方法(維持または漸減)の違いが体重変動に及ぼす影響について検討。結果を、第69回日本糖尿病学会(5月21〜23日)で報告した。・・・ 糖尿病患者の尿ナトカリ比は夏に低下、冬に上昇 糖尿病患者における合併症の進展予防では、血圧管理が重要となる。近年、高血圧や心血管疾患の予防・管理に有用な指標として、食塩(ナトリウム:Na)とカリウム(K)の摂取バランスを反映する尿ナトカリ比が注目されている。内科阿部医院(大分県)の小村真帆氏は、自施設の糖尿病患者649例を対象に尿ナトカリ比の季節変動について検討。「糖尿病患者における尿ナトカリ比は夏季に有意に低下し、冬季に上昇する季節変動を示した」と、第69回日本糖尿病学会(5月21〜23日)で報告した。・・・ フィネレノン、実臨床での腎指標変化の特徴は 糖尿病性腎症(DN)を合併した2型糖尿病患者における尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の上昇は、腎機能低下だけでなく心血管イベントの危険因子ともなる(J Am Soc Nephrol 2009; 20: 1813-1821)。近年、アルブミン尿を有する2型糖尿病患者の残余リスク低減を目的とした治療選択肢として、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)フィネレノンが期待されているが、実臨床でのエビデンスは限られている。昭和医科大学内科学講座糖尿病代謝内分泌内科部門の竹鼻伸晃氏は、DN合併2型糖尿病患者103例を対象にフィネレノン投与後におけるUACRなどの経時的変化について後ろ向きに検討。結果を第69回日本糖尿病学会(5月21〜23日)で報告した。・・・ カレーで低血糖に?食事負荷テストで謎を解明 後期ダンピング症候群は胃切除後に多く見られるが、食道がん術後の胃管再建術後にも生じうる。通常、診断には75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)が用いられるが、症状を再現できない症例が存在する。耳原総合病院(大阪府)代謝・膠原病内科部長の川口真弓氏は第69回日本糖尿病学会(5月21~23日)で、75gOGTTでは診断に至らず、症状の誘因だったカレーライスによる食事負荷テストで低血糖を再現し、後期ダンピング症候群と確定診断できた70歳代の男性症例を紹介した。・・・ 新規GCG/GLP-1薬、肝臓への直接効果は? 新規グルカゴン(GCG)/GLP-1受容体二重作動薬survodutideは、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)治療薬として開発が進んでいる。GCG受容体を介したエネルギー消費の亢進、GLP-1受容体を介したインスリン分泌上昇や食欲抑制など、複数の直接的・間接的機序を通じて肝臓に作用し、MASHを改善する可能性が示唆されている。だが、減量とは独立した直接効果と減量を介した間接効果についての詳細なエビデンスは不足している。愛媛大学大学院地域生活習慣病・内分泌学講座教授の三宅映己氏は、MASH患者を対象とした第Ⅱ相ランダム化比較試験(RCT)の事後解析を行い、survodutideの肝評価項目に対する直接効果および間接効果について検討した結果を、第69回日本糖尿病学会(5月21~23日)で報告した。・・・ 糖尿病治療薬で寿命は延びるのか? 加齢が発症に密接に関与する高血圧や糖尿病、心血管疾患、認知症などは加齢性疾患と呼ばれる。近年、老化やそれに伴う疾患のコントロールを目指す新たな研究領域として、ジェロサイエンスが注目されている。これまで、マウス実験では一部の糖尿病治療薬が代謝改善を超えた抗老化作用を持つ可能性が示唆されている一方、ヒトにおけるエビデンスは非常に限られている。奈良県立医科大学公衆衛生学講座学内講師の西岡祐一氏は、大規模レセプトデータと観察研究からの因果推論を可能にするTarget Trial Emulation(TTE)の手法を用い、糖尿病治療薬とヒト寿命との関連について検討。結果を第69回日本糖尿病学会(5月21〜23日)で報告した。・・・ 2026年開催学会レポート一覧に戻る