糖質制限食は1型糖尿病にも勧められるか

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研究の背景:1型糖尿病では糖質制限により血糖変動が大きくなる懸念

 昨今、糖尿病患者の血糖管理において、単にHbA1cを低下させるのみならず、血糖変動を抑制し、低血糖頻度を低減させるような、いわゆる質の良い血糖管理が求められるようになった(Int J Obes 2002;26 (Suppl 3):S9-S17)。

 1型糖尿病患者の血糖変動について、自身が1型糖尿病患者であるBernstein医師は、著書『糖尿病の解決』(金芳堂 2016年)の中で、"小さな数(量)の法則"と称して糖質摂取を制限し、インスリン注射量を減らすことで、血糖変動を小さくできると述べている。確かに、健常者や2型糖尿病患者では、脂質や蛋白質の摂取により食後高血糖は負に制御される(血糖上昇が緩和される)が(Am J Clin Nutr 2011;93:984-996)、1型糖尿病患者では、脂質や蛋白質の摂取により遅延して血糖が上昇することが知られている(Diabetes Care 2015;38:1008-1015)。ことによると、糖質制限をして脂質や蛋白質摂取が増えると、かえって血糖の変動が大きくなってしまうかもしれない。

 そこで、コペンハーゲン大学の研究者たちは、持続皮下インスリンポンプ療法(CSII)を実施している1型糖尿病患者を対象にして、糖質制限食と高糖質食とを比較するクロスオーバー試験を実施し、その結果をDiabetes Obes Metab2017年3月27日オンライン版)に発表した。

 私自身、数年前に刊行した書籍『糖質制限食のススメ』(東洋経済新報社2012年)の中で(インスリン自己中断を避けるためではあるが)、インスリン注射の受容ができていない1型糖尿病患者への糖質制限食への躊躇を表明していただけに、その結果は注視せざるをえず、ご紹介したい。

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