本書の題名を見ても食指が動かなかった。功成り名遂げた医師の自慢話を想像したためだが、多毛症患者についての文章(本書第1話)を読んで驚いた。臨床家の魂と研究者の眼を持って患者に向き合い続ければ、こんな経験ができるのかと感心したのだ。ところでこの本、著者自らが企画した自費出版である。素人が文章を書き(執筆)、原稿を整え(編集)、本を出す(出版)とはどんなことか。費用の問題も含め、徳島平成病院院長の齋藤晴比古氏に率直な問いをぶつけると、本づくりに対する純粋な思い、果敢な挑戦が見えてきた。