世界で4人に1人が結核菌に感染

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

研究の背景:結核流行の終息にはLTBI対策が必要

 潜在性結核感染症(LTBI)とは、「結核菌に感染しているが発病していない状態」を指す。多くの感染症は感染すると発病に至るが、結核に関しては感染しても約1割の患者しか発病に至らず、生涯結核菌を封じ込めたまま天寿を全うする。

 しかし、関節リウマチに対する生物学的製剤など、免疫を調整する薬剤が出現してからというもの、また日本の高齢化率が上昇しつつある現状から、LTBIへの対応はプライマリケアの現場でも求められることが増えてきた。

 LTBIの集団では、約5〜15%が活動性結核を発病すると考えられており、世界的には3人に1人がLTBIに該当すると試算されてきた(Arch Intern Med 2003;163:1009-1021)。最新の報告では4人に1人程度(約17億人)と見積もられている(WHO Global tuberculosis report 2018)。もちろん、アフリカなどの発展途上国ではLTBIの有病率は高くなり、ウガンダや南アフリカに至ってはその頻度は約半数と考えられている(Int J Tuberc Lung Dis 2011;15:331-336BMC Infect Dis 2015;15:165)。

 世界保健機関(WHO)は「世界結核終息戦略(End TB Strategy)」を掲げ、2035年までに結核流行を終焉させることを目標としている。しかし、いくら活動性結核を治療しても、水面下に存在する多数のLTBI患者からの発病を抑制しなければ、結核感染症を終息させることはできない

 今回紹介するシステマチックレビューおよびメタ解析は、世界人口におけるLTBIの有病率を推定したものである(Eur Respir J 2019年6月20日オンライン版)。

倉原 優 (くらはら ゆう)

国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科医師。2006年、滋賀医科大学卒業。洛和会音羽病院での初期研修を修了後、2008年から現職。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本感染症学会感染症専門医、インフェクションコントロールドクター、音楽療法士。自身のブログで論文の和訳やエッセイを執筆(ブログ「呼吸器内科医」)。著書に『呼吸器の薬の考え方、使い方』、『COPDの教科書』、『気管支喘息バイブル』、『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、『ポケット呼吸器診療』(毎年改訂)など。

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