精神疾患研究の新潮流「進化精神医学」 境界性パーソナリティ障害の解明に新視点 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景: BPDではなぜ心身合併症の有病率が高いのか 境界性パーソナリティ障害(BPD)は、不安定な対人関係、見捨てられることへの不安、情動不安定性、虚無感、慢性的な抑うつなどの幅広い症状により特徴付けられるが、むしろ、薬物乱用、リスクテイキングな性行動、衝動性、自殺企図を含む自傷行為など行動面の症状が心理社会的機能を著しく障害する。その危険因子として、虐待などの幼少期の逆境体験が関係していることが知られている。BPDはパーソナリティ障害の中で最も臨床的に重要なもので、国際疾病分野第11版(ICD-11)のパーソナリティ障害の分類においては、唯一、独立したカテゴリーが設けられている。 一方、BPD患者は、心血管疾患などの身体合併症の有病率が高いことも知られている。ただし、精神病理を中心とするBPDの病態に身体疾患がどのように関わっているのかは謎であった(J Clin Psychiatry 2007; 68: 69-74 、Psychosom Med 2010; 72: 641-647)。 今回紹介する研究は、基本的には米国の横断的コホート研究のデータを用いた疫学研究であるが、疫学データを基に、「進化精神医学」の観点から、BPDの成因と身体疾患を合併する理由について検討したものである(JAMA Psychiatry 2023; 80: 558-566)。 進化精神医学とは、進化生物学の考えを精神医学に取り入れた学問領域であり、近年、少しずつ市民権を得つつあるが、本研究はそうした流れをくんだものである。進化精神医学は、精神疾患を生物の進化の過程に位置付け、適応的な意義を認める視点に基づいている。進化生物学が精神医学に必要な理由は、精神疾患の発症原因を捉えるには神経科学だけでは不十分なためである。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×