データで示された双極性障害による社会的後遺症

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研究の背景:医師が知らぬ間に社会的信用損なう行動に走る場合も

 双極性障害、特に双極Ⅰ型障害は、躁状態において気分高揚や誇大性が出現し、①快楽的な活動に熱中し、乱費により破産に至る、②職場で上司や同僚と衝突して仕事を辞めざるをえなくなる、③性的逸脱行動により離婚に至るーなど仕事、家庭といった社会生活に重大な影響をもたらす疾患である(関連記事「双極性障害が社会で認知されることを願う」)。

 躁状態では、患者本人はいつもよりも調子が良いと感じ「これが本来の自分だ」「この状態が最高の状態である」と思い込み、受診しないことが多く、医師が知らぬ間に社会的信用を損なう行動に走る場合がある。うつ状態で抗うつ薬で治療していたら、自ら受診しなくなり治ったと思ったところ、実は躁状態で大変なことになっていたという事態も起こりうる。

 近年、日本でもレセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database;NDB)が用いられるようになり、データサイエンス的な研究が可能となってきた。健康診断のデータとレセプトデータを組み合わせた商業的なデータベースも利用可能になり、こうしたデータ駆動型研究(事前に仮説を立てることをせずにデータを収集し、得られたデータを分析した上で研究を進める手法)が盛んに行われている。

 しかし、躁状態のように、患者自身に医療を受けることへの困難があり、症状が検査値ではなく社会的な側面に反映される疾患では、レセプトデータや検査データだけから得られる情報は限られる。

 今回、紹介する研究は、米国における医療保険データと消費者信用調査機関が集計した社会的信用を損なうライフイベントに関して一般入手可能なデータを統合し、双極性障害と統合失調症の患者において社会的信用の低下に至るような状況が見られるかを検討したものである(Jama Psychiatry 2023; 80: 710-717)。

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