「スタチン増量よりエゼチミブ併用」に自信! 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする 研究の背景:エゼチミブに心血管イベントの予防効果はあるか? わが国で小腸コレステロールトランスポーター阻害薬エゼチミブが発売されたのは2007年のことであった。当初の臨床試験では確かにLDL-Cの値を低下させるものの、動脈硬化症や心血管イベントの抑制効果はなかなか示すことができず(N Engl J Med 2008; 358: 1431-1443)、その報告は2015年のIMPROVE-IT試験まで待たねばならなかった(N Engl J Med 2015; 372: 2387-2397)。 IMPROVE-ITは超高リスク患者が対象とされており、Number Needed to Treat(NNT:1人を救うのに何人の治療が必要かを示す数字。私見となるが、一般的には50~100以下であれば良い治療と考えられることが多い)は50と小さいものの、相対リスク減少率は6.4%と小さかった。 4S試験(再発予防の相対リスク減少率34%;Lancet 1994; 344: 1383-1389), WOSCOPS試験(初発予防の相対リスク減少率31%;N Engl J Med 1995; 333: 1301-1307), MEGA study(初発予防の相対リスク減少率33%;Lancet 2006; 368: 1155-1163)をはじめ、多くのスタチンによる心血管イベント抑制試験では相対リスク減少率は30~50%程度であるので、IMPROVE-ITは超高リスクな患者を対象とした再発予防試験であればこそエゼチミブの有効性を示せたのであって、私たちが一般に診療している初発予防患者でエゼチミブが心血管イベントを抑制できるかについては少々の疑問を抱いていた。 そして、LDL-Cについては、The lower, the better(低ければ低いほど良い)とされるものの(Med Clin North Am 2012; 96: 13-26)、but how and in whom(どのようにして下げるか、誰を対象にして下げるか)も問題とされている(N Engl J Med 2015; 372: 1564-1565)。その意味で、通常用量のスタチンでLDL-Cの管理が不十分な場合に、高用量に増量すべきなのか、それともスタチンは通常用量のままにしてエゼチミブを追加すべきなのか、長らく私自身迷っていた。 この問題にアプローチしたのが、2022年に報告されたRACING試験(Lancet 2022; 400: 380-390)であった。RACINGそのものは、元来が非劣性試験であり、通常用量のスタチンとエゼチミブの併用療法が高用量のスタチン単剤療法に対して非劣性であることは示したものの、優越性を示すことはなかった。 このたび、リアルワールドデータで検討してみると、併用療法の方が高用量単剤療法よりも心血管イベント抑制に優越していることを示す論文が発表されたJ Am Coll Cardiol(2023; 82: 401-410)。今後多くの臨床家の臨床判断に影響を与えうる知見であると考え、RACINGの結果とともにご紹介したい。 参考になった 名の医師が参考になったと回答 記事をクリップ 記事をクリップして、あとでマイページから読むことができます Facebookでシェアする Xでシェアする Lineでシェアする ×