軽視禁物!心気症は死亡リスク高い深刻な病気

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研究の背景:病名の変遷も手伝って軽く考えられてきた

 心気症状は、メンタルクリニックに限らず、臨床各科の外来でかなり高頻度に見られる、ありふれた症状である。にもかかわらず、心気症を深刻な病気として専門的に研究している研究者はあまり見かけない。検査データには異常がないのに、病気を気にしてやまない患者を見ると、医師は「気にし過ぎですよ」と告げ、その愁訴を深刻には捉えないことが多いのではないだろうか。

 このように軽く考えられ、真剣に取り組まれていない理由には、その病名の変遷も関わっているかもしれない。

 もともとは「心気神経症」「心気症」などと呼ばれていたが、身体表現性障害という大分類名も使われ、混乱し始めていたところ、『精神疾患の分類と診断の手引き第5版』(DSM-5)では、心気症が「身体症状症」と「病気不安症」に分けられてしまった。身体症状がある場合が身体症状症、症状はないが病気を心配している場合が病気不安症であるが、歴史ある心気症の概念がいわば解体されてしまったことになり、研究の枠組みもふらふらしている状況にある。

 今回紹介する研究は、心気症における死亡リスクを調べたしっかりした疫学研究としては初めてのものである(JAMA Psychiatry 2023年12月13日オンライン版

加藤 忠史(かとう ただふみ) 

 順天堂大学精神医学講座主任教授。1988年東京大学医学部卒業、同病院で臨床研修、1989年滋賀医大精神医科大学講座助手、1994年同大学で医学博士取得、1995年米・アイオワ大学精神科に留学(10カ月間)。帰国後、1997年東京大学精神神経科助手、1999年同講師、2001年理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームリーダー、2019年理化学研究所脳神経科学研究センター副センター長を経て、2020年4月から現職。

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