HFpEF・臨床医が知るべき全て

付けたり:勝海舟、正心誠意、勝小吉の夢酔独言、ハーバードの内科医はハリソン新版が出るたび通読する、ASDの証明、女性化乳房の女性、obesity pandemic、米国人の70%が肥満、私のE/A比、方丈記、清少納言夜明けの庭散策、プライム記号、#1はナンバーワンと読む

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感染症ビジョナリーズ 感染症ビジョナリーズ

 Lancet2024 Mar16; 403: 1083-1092)にHFpEF(駆出率の保たれた心不全、Heart Failure with preserved Ejection Fraction)の総説があり、非常に興味深く読みました。「HFpEF、臨床医が知るべき全て」なんて、まるで大学受験の参考書みたいなキャッチコピーです。

 Lancet「HFpEF、臨床医が知るべき全て」の最重要点は下記11点です。

  1. HFpEFにSGLT2阻害薬は2023年欧州心臓学会ガイドラインで「Class 1a」の推奨!
  2. 体液過剰のHFpEFで利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド、アルダクトン)はうっ血改善の鍵
  3. HFpEFは単なる左室拡張障害でなく炎症が鍵。肥満、糖尿、加齢、全身疾患が影響
  4. HFpEFにGLP-1受容体作動薬はエビデンス不足、エンレスト、アルダクトンはClass 2b推奨。β遮断薬、硝酸は無効
  5. 心外膜脂肪組織増加でアディポサイトカイン分泌、心筋の炎症、硬化を起こす
  6. HFpEFは心不全(+)でLVEF≧50%、BNP高値。臨床試験では定義単純化(LVEF≧40%)
  7. 先進国で心不全の半数はHFpEF。加齢、女性(糖尿病、肥満多い)、合併症の相乗効果
  8. HFpEFはHFrEFに比べて予後が良いわけではない
  9. HFpEFの2割はBNP(左室拡張で分泌、心室壁厚と逆相関、Na利尿)が上昇しない
  10. 診断:CHFでEF≧50%、BNP高値、RWT>0.42、LVMI≧95、LA拡大、E/e'>9、TR>2.8m/秒、HFpEF diagnostic algorism、HFA-PEFF、H2FPEP score
  11. HFpEFの類似疾患多い:アミロイドーシス、サルコイドーシス、ファブリー病、心膜疾患、PH、右室不全など。若年者は注意

 現在HFrEF(駆出率の減少した心不全)では神薬〔ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)はClass 1aの救命薬:life saving drugs〕をできる限り高用量、ループ利尿薬はeuvolemia(正常体液量)を保つ最小量を使うことになっています。利尿薬を使い過ぎると、腎機能が悪化して神薬を減らさざるをえなくなり死亡率が上がるからです

 とりわけHFrEFでは「fantastic four」と言われるβ遮断薬、MRA(商品名アルダクトン)、アンジオテンシン受容体ネプライシン阻害薬(ARNI、エンレスト)、SGLT2阻害薬を使うことが推奨されています。ただ当西伊豆健育会病院ではARNIは大変高価なのでACE阻害薬、ARBでコントロールできない場合に限って考慮しています。

 一方、HFpEFでは今までうっ血に対する利尿薬程度しか手段がありませんでした。今回、このHFpEFの総説は誠に驚くことばかりでした。2023年、SGLT2阻害薬はついにHFpEFで「Class 1a」の推奨となったのです!! アルダクトン、エンレストはClass 2b推奨、β遮断薬、硝酸は無効です

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