IFX強化療法は重症UCの予後を改善するか

増量・短縮投与と標準プロトコルを比較したRCTから

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研究の背景:欧米で検討されているIFX強化療法は、日本では適応外

 難治性潰瘍性大腸炎(UC)に対する治療の選択肢は、最初の生物学的製剤でもある抗TNFα抗体インフリキシマブ(IFX)を皮切りに、数多くの抗体製剤や低分子化合物が開発されたことで飛躍的に増加した。欧米では、Truelove and Witts Criteriaに基づき重症例を特定し、急性重症潰瘍性大腸炎(acute severe ulcerative colitis;ASUC)として入院適応の参考とすることが多い(厚生労働省の重症度分類における重症より少し軽度の方も入ってくる分類である点に注意)。

 ASUCについては貧血や発熱、頻脈などの全身症状を伴うため、質の高いエビデンスのソースとなる第Ⅱ、Ⅲ相臨床試験(治験)の対象とすることが困難な場合も多く、有効性が確認された薬剤は少ない。IFXはCYSIF試験でシクロスポリンとともにASUCでの有効性が確認された数少ない薬剤の1つであるが(Lancet 2012; 380: 1909-1915)、重症例では薬剤クリアランスが亢進すること、導入早期の血中濃度がその後の有効性に相関することなどが報告され(J Gastroenterol 2016; 51: 241-251)、急性期に倍量投与する、期間を短縮して投与を追加するなどの強化療法の試みが諸外国でなされてきた(Clin Gastroenterol Hepatol 2015; 13: 330-335.e1)。日本では、UCに対しIFXは増量も短縮投与も保険上認められていないため、欧米に羨望のまなざしを送っていた医師も少なくないと思われる。

 もう1つの抗TNFα抗体製剤であるアダリムマブでは、導入期の増量と期間短縮を検討したランダム化比較試験(RCT)で短期の上乗せ効果は示されなかったが(Gastroenterology 2022; 162: 1891-1910)、特に治療効果が期待されるASUCを対象とした試験ではないこと、エンドポイントも8週とASUCにおける現実的な時期とはいえないことなどから、増量や期間短縮の有用性が理論上見込まれるASUCにおけるIFXの臨床試験が望まれていた。(関連記事「ウパダシチニブはIBD診療を変えるか」)

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