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早寝がうつ病と自殺念慮を予防―米研究

 2011年08月05日 10:38

 【ウェストチェスター(米イリノイ州)】米コロンビア大学医療センターのJames E. Gangwisch准教授らの研究により、親から就寝時刻を早く設定されている青少年では、うつ病と自殺念慮(死にたくなる気持ち)のリスクが有意に低下することが分かった。これは、早寝が睡眠時間を延長し、睡眠の深さを増すことで予防効果を発揮するためだと考えられる。逆に、就寝時刻が遅いとうつ病や自殺念慮のリスクが上昇し、午前0時以降の就寝では、午後10時以前に寝ている青少年に比べて20%増えたという。詳細は米医学誌「Sleep」(2010; 33: 97-106)に発表された。

睡眠時間と睡眠の質が重要

 今回の研究結果によると、親から午前0時以後の就寝時刻を設定された青少年では、午後10時以前の就寝時刻を設定された青少年に比べ、うつ病のリスクが24%、自殺念慮のリスクが20%上昇する。ただし、睡眠時間(自己申告)と熟睡感が高まると、この関連の度合いは低くなったという。

 睡眠時間が毎晩5時間以下の青少年では8時間の青少年に比べ、うつ病のリスクが71%、自殺念慮のリスクが48%高かった。普段、熟睡できている青少年では、うつ病と自殺念慮のリスクが有意に低かった。

 筆頭研究者のGangwisch准教授は、今回の結果は寝不足がうつ病の発症に何らかの影響を与えているとの説を支持するものとした上で「不適切な睡眠が、他のリスクなどと絡み合ってさまざまな経路をたどることで、うつ病を引き起こすリスクの要素になるとの理論にぴったり合う。したがって、良質で十分な睡眠はうつ病の予防手段にも治療手段にもなるだろう」と述べている。

 データは、1994~96年に第7~12学年(日本の中学1年生~高校3年生に相当)だった生徒を対象とした全米青少年健康縦断研究(Add Health)の1万5,659例とその親から収集された。

 参加者の7%(1,050例)は抑うつ状態自己評価尺度(CES-D=Center for Epidemilogic Studies Depression Scale)を用いてうつ病と判定され、13%(2,038例)は過去12カ月のうちに真剣に自殺を考えたことがあると報告した。うつ病と自殺念慮は、遅い就寝時間、短い睡眠時間、睡眠不足の自覚、女性、高年齢、親からケアされているという自覚の低さに関連していた。

一次予防の可能性を示唆

 親の45%は平日の子供の就寝時刻を午後10時以前に、21%は午後11時に、25%は午前0時以後に設定していた。白人では他の人種や民族グループに比べ、親が就寝時刻を午後11時に設定することが多かった。子供の約70%は、親が設定した平日の就寝時刻に従っていた。子供が報告した実際の就寝時刻は、親が設定した時刻から平均5分ほどしか遅れていなかった。

米国睡眠学会(AASM)の推奨する青少年の睡眠時間は9時間以上だが、今回の研究で自己申告された青少年の平均睡眠時間は7時間53分。親の設定就寝時刻が午後10時以前の青少年は平均睡眠時間が8時間10分で、これは午後11時就寝群(7時間37分)より33分、午前0時以降就寝群(7時間30分)より40分長い。睡眠時間が10時間以上の場合を除くと、平均睡眠時間の長さと平均就寝時刻の早さは関連していた。

 Gangwisch准教授らは「睡眠不足は、有害な刺激に対する興奮などの情動的脳反応の調節に影響するのかもしれない。また、日常的なストレスに対処する能力を妨げ、同年齢の人や年長者との関係を障害する精神的要因を引き起こし、判断力、集中力、衝動を制御する能力に影響するのかもしれない」と指摘。「健康的な睡眠習慣について青少年と親を教育し、不適切な睡眠習慣の修正を支援することが、うつ病と自殺念慮の一次予防の手段となるだろう」と述べている。

Medical Tribune紙 2010年2月11日号 掲載

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