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軽度認知障害の予防と改善に運動が有用―米国の2研究

 2011年08月08日 17:13

 【シカゴ】軽度認知障害は、加齢に伴う思考能力や学習能力および記憶力の自然な変化と認知症の中間に位置する状態。認知症を発症する人が一般人口で毎年1~2%なのに対し、軽度認知障害患者では10~15%にも及ぶ。こうした中、運動が軽度認知障害の予防や認知機能改善に役立つとする2件の研究が、米医学誌「Archives of Neurology」に発表された。一方の研究によると、50歳以降から始めた中等度運動で軽度認知障害を発症する危険性が3~4割低下したという。

認知機能改善効果は女性で顕著

 米ワシントン大学のLaura D. Baker准教授らは、6カ月間にわたる高強度の有酸素運動プログラムにより、軽度認知障害者の認知機能が改善すると同誌(2010; 67: 71-79)に発表した。

 同准教授らは、軽度認知障害の成人33例(男性16例、女性17例、平均年齢70歳)を対象としたランダム化比較試験を実施。23例はトレーナーの監視の下、高強度の有酸素運動を1日45~60分、週4日行った。残りの10例は対照群とし、トレーナーの監視の下、同じスケジュールでストレッチを行い、心拍数は低い値に維持した。フィットネステスト(体力測定)、体脂肪の測定、代謝のマーカー(指標)を調べるための血液検査、認知機能の測定は、試験開始前、試験中、試験終了6カ月後の3回実施した。

 計29例が試験を完遂。対照群と比べ、有酸素運動群では全体的な認知機能の改善が認められた。男女別では健康の改善度は同等だったが、認知機能の改善効果は女性でより顕著だった。

 同准教授らは「男女の差は、運動が代謝に及ぼす効果と関係があるのかもしれない。運動がインスリンやブドウ糖の利用や産生に及ぼす影響と、ストレスホルモンであるコルチゾルに与える影響は、男女で異なるからだ」と説明。さらに「心拍数上昇を伴う行動的介入を一定間隔で6カ月間実施したが、費用もかからず、薬物治療で起こるような有害作用もない。軽度認知障害患者の認知機能を改善するには、この方法で十分だった」と結論付けている。

運動する人はライフスタイルも健康

 一方、米メイヨー・クリニックのYonas E. Geda氏らは、中年期以降に中等度の運動をすることで、軽度認知障害リスクを軽減できると同誌(2010; 67: 80-86)に発表した。

 同氏らは2006~08年、同クリニック加齢研究に参加した人のうち、認知症でない1,324人を対象に、運動に関する質問調査を実施。専門家が質問票の回答を評価し、正常認知機能と軽度認知障害に分類した。

 その結果、198人(年齢中央値83歳)が軽度認知障害、1,126人(同80歳)が正常認知機能と判定された。早歩き、エアロビクス、ヨガ、筋力トレーニング、水泳など中等度の運動を50~65歳から行っていると回答した人は軽度認知障害と判定される割合が低く、軽度認知障害リスクが39%低下していた。また、それ以降から中等度運動を行っている人でも、リスクが32%低下していた。これらの研究結果は、男女いずれでも一致していた。

 しかし、ボウリング、ゆっくりとしたダンス、カートを利用したゴルフといった軽度の運動やジョギング、スキー、ラケットボールのような激しい運動と軽度認知障害リスク低下との間に独立した関連性は認められなかった。

 同氏らは「運動は、脳血流の増大、ニューロン(神経細胞)の発達、心臓や血管の病気リスク低減などを介して、軽度認知障害リスクを低減する可能性がある」と指摘。さらに「運動は、健康的なライフスタイルの指標なのかもしれない。定期的な運動を行っている人は、食習慣、事故防止、医療に対する意識などに関して自分を律する傾向にあり、健康に良い行動を取っていると考えられる」と述べている。

 Medical Tribune紙 2010年2月25日号 掲載

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