慢性の睡眠不足が健康や仕事に持続的な影響―米研究
2011年08月08日 17:13
【ワシントン】米ブリガム&ウィメンズ病院のDaniel A. Cohen氏(睡眠医学)らは、慢性の睡眠不足の場合、仕事の能率の低下は簡単には回復せず、健康にも持続的な悪影響が表れるとの研究結果を米科学誌「Science Translational Medicine」(2010; 2: 14ra3)に発表した。
ミスや事故を引き起こしやすい
普段から睡眠不足が続き、週末などに長時間の睡眠で不足を取り戻そうとしている人は、慢性的な睡眠不足の自覚がないのかもしれない。しかし、そのような人が夜勤などで遅くまで起きていなければならない場合、仕事の能率の低下は想像以上に速く、ミスや事故を引き起こしやすくなる。
睡眠の正確な仕組みは不明だが、これまでの研究から、身体が必要とする休息を取らずに過ごしていると、病気やストレス、学習障害、記憶障害、交通事故のリスクが高まり、体重も増加することが明らかになっている。
Cohen氏らの研究では、急性の睡眠不足、慢性の睡眠不足、概日リズム(サーカディアンリズム)の影響が重なると、仕事の成績にどのような影響が及ぶかを明らかにするような試験デザインが採用。被験者は3週間、睡眠と覚醒を繰り返し、1日当たり5.6時間の睡眠を取った。
参加者の多くは、急性の睡眠不足なら10時間程度の長い睡眠を1回取るだけで睡眠不足を解消できたが、慢性的な睡眠不足を有する場合は、覚醒時間が1時間長くなるごとに仕事の能率が低下し、特に深夜にはミスや事故を起こしやすくなった。
今回の研究結果は、長距離トラックの運転手や警察官、医師など、変則的なシフトで仕事を行っている人の覚醒状態を高め、睡眠障害患者の治療にも役立つかもしれない。
Medical Tribune紙 2010年3月4日号 掲載