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大流行中のマイコプラズマ肺炎、抗生物質耐性化が9割

 2011年10月27日 11:27

 今年は、子供のマイコプラズマ肺炎の流行期といわれている。慶應義塾大学感染制御センターの岩田敏氏らが2000年から今年にかけて行ったマイコプラズマ肺炎患者621人を対象とした調査によると、マクロライド系の抗生物質に高い耐性を示すマイコプラズマの分離率は02年までゼロだったが、今年に入って89.5%まで増加していることが明らかになった(10月25日付国立感染症研究所感染症情報センター病原体情報)。岩田氏らは、十分な治療効果を期待できる抗生物質がないとしており、最も効果が期待できるテトラサイクリン系の抗生物質ミノサイクリンの使用も必要最小限にとどめるよう呼び掛けている。

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瞬く間に周囲へ拡散

 マイコプラズマ肺炎は、細菌のマイコプラズマによって引き起こされる感染症。幼児から青年期に多く見られ、通常の細菌性肺炎とは違って比較的重症に感じることが少なく、X線所見も異なることから、過去には「異型肺炎」ともいわれていた。

 通常は秋から冬が日本における流行期とされるが、岩田氏らの報告によると今年は春から流行が始まり、最近再び勢いを増しているという。この調査では、患者から分離されたマクロライド系抗生物質に対する耐性菌の割合は約90%と、過去最高を記録している。

mycoplasma.gif

 岩田氏らは「この耐性化は全国規模で見られており、ひとたびあるクラスで発症者が出ると、潜伏期間やせきの強さもあって瞬く間に周囲へ拡散している」と述べている。感染研の情報では学校保健法上、マイコプラズマ肺炎の流行を防ぐ積極的な措置の規定はないようだ。

マイコプラズマそのものには無効か

 また、岩田氏らが菌の耐性獲得状況を調べたところ、現在、マイコプラズマ感染症に使われている主なマクロライド系抗生物質すべてに高度な耐性化が認められた。同氏は「(マクロライド系抗生物質が)以前は優れた効果が見られていたにもかかわらず、症状が長期化している症例や重症化例が増えているのはこのため」であり、もはや同薬はマイコプラズマそのものに無効になっているはずとの見解を示している。

 さらに、マイコプラズマ感染症に使用できるもう1つの抗菌薬、ミノサイクリンについても「耐性菌は認められていないが、抗菌力が非常に優れているというわけではない」と解説。なお、ミノサイクリンは歯が着色する副作用があるため、8歳未満の子供に対しては慎重な投与が求められている。

 岩田氏らは、ミノサイクリンを投与する場合の使用期間は通常3日、長くても5日以内にとどめたいとしている。

(編集部)

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