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健診の肺がん検査は効果なし?―米研究

 2011年10月28日 11:27

 健康診断で行われている胸部X線検査は肺がんを発見するためのものだが、その有効性について世界的には疑問視する声が多数を占め、実施する国が少ない。こうした中、米ミネソタ大学のMartin M. Oken氏らが15万人を対象とした研究結果を解析したところ、定期的な胸部X線検査による肺がん死亡率の低下が認められなかったと、10月26日付の米医学誌「JAMA」(電子版)に報告した。この結果は、ハワイで開催された米国胸部疾患学会(CHEST 2011、10月22~26日)でも発表されている。

肺がん発症率も同等

 Oken氏らは、55~74歳の米国人15万4,901人を対象に、全米の胸部X線検査実施施設10カ所のいずれかで1993年11月~01年7月に年1回の定期検査を受ける介入群(7万7,445人)と、定期検査を受けない通常診療群(7万7,456人)に分けた。

 介入群に対しては4年にわたって年1回の胸部X線検査を実施し、試験開始年の受検率は86.6%、3年目では79%に低下した。4年間の平均受検率は83.5%で、介入群の91.2%が1回以上受検した。一方、通常診療群でも検査を受けた人がいたが、受検率は11%にとどまった。

 対象者のがん診断、死亡および死亡原因に関するデータを収集した結果、肺がんが検出された人は介入群1,696人、通常診療群1,620人。年間1万人当たりの累積肺がん発症率は介入群20.1人、通常診療群19.2人で、両群は同等だった。

 肺がんによる死亡者数は、介入群1,213人、通常診療群1,230人で、年間1万人当たりの累積肺がん死亡率は介入群14.0人、通常診療群14.2人と、こちらも両群の差は認められなかった。なお、喫煙の状況別に検討しても両群は同等だった。

 今回の結果について、Oken氏らは「介入群の定期検査受検率は平均で8割を超え、通常診療群では1割程度だったにもかかわらず、肺がん死亡率は同等だった」と説明。「4年に及ぶ定期的な胸部X線検査が、肺がん死亡率の低下に影響しないことが証明された」と結論している。

 なお、日本肺癌学会では集団検診における胸部X線検査について、「肺癌集団検診ガイドライン」の中で推奨している。

(編集部)

  • 2010年,厚生労働省は対象者を40歳以上に見直し,規定を改正した

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