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サプリメントで前立腺がんリスクは低下せず―独研究

 2012年02月22日 10:08

 ドイツ・ユーロメドクリニックのBernd J. Schmitz-Dräger氏らは、前立腺がん予防に関する最近の研究結果について、ドイツ医学誌「Der Urologe」(2011; 50: 1271-1275)に報告した。それによると、特定のビタミンサプリメントや微量元素による前立腺がんリスクの低下は確認されなかったという。ただし、食事が前立腺がんリスクに影響を及ぼすことに変わりはないようだ。

偽薬と発がん率に差なし

 前立腺がん予防に関するいくつかの先行研究とメタ解析から、ビタミンC、ビタミンB12、葉酸は前立腺がんの発生に影響を及ぼさないことが示されている。また、50歳以上の男性3万5,000人以上を対象とした研究では、セレンとビタミンEの前立腺がん予防効果を検証するため、被験者を(1)セレン(1日当たり200マイクログラム)投与群、(2)ビタミンE(同400国際単位=IU)投与群、(3)セレン+ビタミンE併用群、(4)偽薬群―の4群に割り付けて5年半投与した。

 その後、1年半の観察を行ったが、4群の前立腺がん発生率に有意差は認められなかった。Schmitz-Dräger氏らは「喫煙者ではビタミンEの恩恵を受ける可能性もあると考えられるが、喫煙者を対象とした解析はまだ行われていない」と述べている。

 そのほか、トマトなどに含まれるリコピンも前立腺がんリスクを低下させると考えられているが、最近の研究では、リコピンの血中濃度と前立腺がんとの関連性は確認されていない。ただし、Schmitz-Dräger氏らは「この結果は、トマトやトマト加工品の摂取が前立腺がん予防に有益である可能性を全面的に否定するものではない」と付け加えている。

食生活だけでなく禁煙、運動を

 実際、こうした特定の物質の有効性が確認されなくても、食事が前立腺がんリスクに影響を及ぼすことに変わりはない。特にアジアや地中海の食事は良いとされ、これには大豆に含まれるフィトエストロゲンやトマトがリスク低下に一役買っていると考えられる。その一方で、乳製品の多量摂取が前立腺がんリスクを上昇させる可能性が示唆されており、乳製品に含まれるカルシウムが原因とされている。

 Schmitz-Dräger氏らは「こうした点を踏まえた健康な食生活に加え、禁煙や十分な身体活動(運動)が前立腺がん予防に有益であることは間違いない」と強調している。

 また、5α(アルファ)還元酵素阻害薬(フィナステリド、デュタステリドなど)の服用により、前立腺がんリスクが約25%低下することが立証されている。悪性度の低い腫瘍に対して、しばしば過剰治療が行われることが問題となっているが、5α還元酵素阻害薬は特にそうした腫瘍に有効であることが示唆されている。ただし、同薬は前立腺がんの一次予防薬として承認されていないため、Schmitz-Dräger氏らは「前立腺肥大症など適応症がある場合に限り"利用"できる」と付け加えている。

(編集部)

  • メタ解析......過去に行われた複数の研究結果を合わせて解析し、より信頼性の高い結果を導く分析方法。メタアナリシス。

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