高齢者の夜間口腔乾燥症―唾液の分泌機能低下が主な原因
2012年03月19日 10:58
高齢者が「口が渇いて夜中に目が覚める」「朝起きた時に口が渇いている」といった症状を訴えるケースがある。口の渇きを中心にいろいろな自覚症状がある状態をドライマウス、または口腔(こうくう)乾燥症と呼ぶ。ドライマウス専門外来を設置する病院も出てきた。
痛みや口臭なども
ドライマウスでは、口の渇き以外にも、口の中に痛みを感じたり、口臭や味覚異常などが表れる。鶴見大学歯学部付属病院(神奈川県)でドライマウス専門外来を担当する中川洋一講師(口腔外科学)は「高齢者の場合は、加齢による唾液(だえき)の分泌機能の低下が大きな原因です。高血圧や抗アレルギー薬など飲んでいる薬の副作用、ストレスなどによっても唾液が出にくくなることがあります」と話す。
また、睡眠中に口を開けたままの状態が長く続くと、唾液が蒸発してしまい、ドライマウスが起こる。口が開いた状態になる原因としては、鼻の病気、歯ぎしりやかみ締め、いびきなどが考えられる。いずれにしても、昼間に口の渇きなどの症状が見られなければ夜間口腔乾燥症と診断される。
専用の保湿器具も
夜間口腔乾燥症の治療ではこれらの症状を防ぐこととともに、口腔内の乾燥対策が中心となる。最近はスプレーやジェルタイプなど口腔ケア用のさまざまな保湿液が市販されており、就寝前に口の中に塗っておくと乾燥を防げる。
「専用の保湿器具は、患者さんの歯型を取ってぴったり合うように作ります。就寝時に装着すると、歯ぎしりやかみ締め、いびき防止に効果があります」(中川講師)。保湿器具の内側に保湿ジェルを塗っておくと、睡眠中も口の中の潤いが保たれ、さらに効果的だという。
口の渇きには、シェーグレン症候群と呼ばれる病気が関係している場合がある。これは、体内の免疫異常によって起こる難病で、口だけではなく目も乾き、皮膚炎や関節リウマチなどの全身症状を伴うことも多い。正確な診断には、唾液分泌量の測定を含めた精密検査が必要だ。
「最近は中高年だけでなく、若い人の間でもドライマウスが増えています。気になるようであれば、歯科や口腔外科を訪ねてみてください」と、中川講師は話している。
(編集部)
2008年3月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)