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南相馬市住民の被ばく線量、低値だが長期的評価が必要

 2012年08月16日 13:17

 東日本大震災直後に起きた福島第一原子力発電所の事故で、原発周辺地域の住民は放射性物質による大気、水、土壌の汚染、それに伴う内部被ばく、長期的な発がんリスクの恐怖に直面した。しかし、計測結果に基づく内部被ばくの実態はこれまで明らかではなかった。南相馬市立総合病院(福島県)の非常勤医でもある東京大学医科学研究所の坪倉正治氏(血液内科)は、市内の一部が福島第一原発から半径20キロ圏内に入る南相馬市の住人を調査した結果、「被ばく線量レベルは成人も子供もほとんどが低く、セシウム除去剤の使用対象となる値を示したケースはなかった」と、8月15日発行の米医学誌「JAMA」(2012; 308: 669-670)に報告した。ただし、長期的な評価はこれからの課題だという。

全体の約3分の1からセシウムを検出

 福島第一原発の23キロ北に位置する南相馬市では2011年3月の発災直後、多くの住民が避難のために同市を離れたが、同年8月までに約半数の住民が戻ってきた。そこで坪倉氏らは、6歳以上の全住民を対象とした内部被ばく量測定を実施し、同年9月26日~翌年3月31日に、呼び掛けに応じた住民の検査を行った。

 2011年8月15日時点での同市人口の24%に相当する9,498人がプログラムに参加。うち3,286人(34.6%)から実際にセシウムが検出された。セシウム除去剤「ペルシアンブルー」の使用対象となる値を示したケースはなかった。

 子供1,432人(6~15歳、女児720人)では、235人(16.4%)からセシウムを検出。身体当たり線量は210~2,953ベクレル(中央値590ベクレル)、体重1キロ当たり線量は2.8~57.9ベクレル(中央値11.9ベクレル)だった。

 一方、大人8,066人(15~97歳、女性4,512人)では、3,051人(37.8%)からセシウムを検出。身体当たり線量は210~1万2,771ベクレル(中央値744ベクレル)、体重1キロ当たり線量は2.3~196.5ベクレル(中央値11.4ベクレル)だった()。

内部被ばく1ミリシーベルト超えは1人のみ

 子供と大人の被ばくリスクは、統計学的に明らかな差があった。これは、セシウム代謝の違い、食品・水の摂取に対する注意度の違い、子供の戸外での活動の変化などを反映していると考えられた。

 預託実効線量(内部被ばくの量)は1.07ミリシーベルトの1人を除く全員が1ミリシーベルト以内に収まっていたが、もともと低被ばく量だったのか、それとも時間の経過とともに減ったのかは定かでない。

 坪倉氏は「現在までのところ、被ばくによる急性の健康問題の発生は報告されていないが、今後もモニタリングを継続して放射線被ばくの長期的な影響を慎重に評価していく必要がある」と締めくくっている。

(編集部)

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