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子供時代の"精神的虐待"が高齢期の脳梗塞リスクに

 2012年10月18日 17:34

 近年、日本でも親による子供の虐待が多く報道されている。こうした虐待や育児放棄を「ネグレクト」というが、これは直接体に被害を与える「身体的ネグレクト」だけでなく、精神的に子供を虐待する「情緒的ネグレクト」もある。米ラッシュ・アルツハイマー病センターのRobert S. Wilson氏らは、子供の頃に情緒的ネグレクトを受けた経験が高齢期の脳梗塞発症リスクを上昇させるという研究結果を、米医学誌「Neurology」(2012; 79: 1534-1539)に報告した。

虐待当時は発達の遅れなどが問題に

 子供に衣食住を与えなかったり、身体的・性的な虐待を加えたりする身体的ネグレクトに対し、情緒的ネグレクトは子供に愛情などを示さないこと。具体的には、子供をばかにする、人格や意見を全否定する、厳し過ぎて家庭がいつも緊張しているなどが挙げられる。

 ネグレクトを受けた子供の特徴として、低身長・低体重、不衛生、無気力、顔色が悪い、元気がない、発達(特に言葉)の遅れ、集中力がない、多動、攻撃的、衝動的、学習困難、協調性がない、けがや事故が多い、遅刻や休みが多い、盗み食いをする、がつがつ食べる―などが挙げられる。中でも情緒的ネグレクトを受けている子供の場合、発達の遅れや低身長・低体重、感情表現ができない、他人への共感と配慮の欠如、コミニュケーションが取れないなどが問題になる(日本小児科学会「子ども虐待診療手引き」より)。

 これらは虐待を受けている当時の特徴だが、ネグレクトは成人後にも影響することが指摘されており、それは精神面だけでなく身体面にも表れるといわれている。

暴行などではリスク上昇せず

 Wilson氏らは、米国の高齢者を対象とした研究の参加者から、死亡時の脳解剖実施を承諾した認知症のない55歳以上の1,040人について、子供の頃に受けた虐待と高齢期での脳梗塞発症との関連を評価した。

 なお、子供の頃に受けた虐待の評価には、小児期トラウマ(心的外傷)質問票(CTQ)改訂版(0~31点)を使い、虐待の種類は18歳までに受けた(1)情緒的ネグレクト、(2)両親からの脅迫、(3)両親による暴行、(4)家族の騒動、(5)経済的支援の必要性に分類した。

 平均3.5年の追跡期間中に死亡が確認されたのは257人(死亡時の平均年齢88.5歳)。そのうち192人で、CTQの点数が高い人では低い人に比べて脳梗塞の発症率が高く、発症リスクが1.1倍になることが分かった。

 虐待の種類別では、情緒的ネグレクトのCTQ点数が高い人で低い人よりも脳梗塞の発症率が高く、発症リスクは1.2倍だった。一方、両親による暴行など他の虐待ではこの関連が認められなかったという。

 今回の検討からWilson氏らは、子供の頃の情緒的ネグレクトが高齢期での脳梗塞発症リスクになる可能性を指摘した。同誌の編集者である米メイヨークリニックのKevin M. Barrett氏とJames F. Meschia氏は「子供の頃の虐待体験が脳の組織学に異変をもたらし、脳梗塞の原因となるのかは確実でない」としつつも、今回の研究結果が脳梗塞発症の過程を把握させる可能性があり、治療にも影響するかもしれないと述べている。

(編集部)

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