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抗うつ薬「SSRI」で脳出血リスク1.4~1.5倍

 2012年10月29日 09:13

 カナダ・ロバーツ研究所のDaniel G. Hackam氏らは、うつ病やパニック障害などの治療薬として使われている「SSRI」(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と脳出血に関する従来の研究を評価・解析した結果、同薬の脳出血リスクは1.4~1.5倍だったと、10月17日発行の米医学誌「Neurology」(電子版)に発表した。SSRIはこれまで、消化管出血(食道から直腸の出血)のリスクを高めるとも報告されている。

くも膜下出血では認められず

 Hackam氏らによると、SSRIは血小板凝集阻害作用、つまり血液を固まりにくくさせる作用を持っている。消化管出血リスク上昇の報告もこれによるものと思われ、そうなると脳出血リスクも高めることが考えられるが、その関連については解明されていなかったという。

 同氏らは、SSRIと脳出血リスクとの関連を検討した従来の研究16件(対象50万6,411人)について、系統的レビュー※1とメタ解析※2を実施。その結果、脳出血のタイプ別では、SSRIを服用していない人に比べた服用者の割合は、頭蓋内出血で1.51倍、脳内出血で1.42倍と高かったが、くも膜下出血、脳内出血+くも膜下出血ではSSRI服用との関連が認められなかった。

 研究の種類別(コホート研究※3、症例クロスオーバー研究※4、症例対照研究※5)の解析では、いずれもSSRI服用で脳出血リスクの上昇が認められた。

 すでに抗凝固薬(ワルファリンなど)による脳出血リスクについての報告があることから、抗凝固薬との併用についても調べた結果、抗凝固薬のみを服用しているに比べ、SSRIと抗凝固薬の併用では脳出血リスクが上昇することが分かった。

 今回の結果から、Hackam氏らは「SSRI服用していない人と比べ、服用者では脳出血リスクが上昇することが分かった」としながらも、この結果を基に世界的な脳出血リスクを10万人当たり年間24.6件と推計し、「極めてまれであり、絶対リスクはかなり低いだろう」とコメント。その上で、さらなる研究を行ってデータを蓄積することが必要と述べている。

(編集部)

  • ※1系統的レビュー......過去に行われた複数の研究を選別、吟味、要約し、それらが最も良い科学的根拠(EBM)となるかどうかを評価する分析方法。システマチックレビュー。
  • ※2メタ解析......過去に行われた複数の研究結果を合わせて解析し、より信頼性の高い結果を導く分析方法。メタアナリシス。
  • ※3コホート研究......年齢、性別、食べ物、喫煙の有無、住んでいる地域など、特定の要因を持つ集団とそうでない集団を追跡し、ある病気にかかる割合を比較する研究手法。観察研究の一つ。要因対照研究。
  • ※4症例クロスオーバー研究......個々の症例について、ある病気の発生前後でさらされていた要因(薬を飲んでいた・飲んでいなかったなど)を比較する研究手法。観察研究の一つで、症例対照研究の一種。介入研究であるクロスオーバー研究とは異なる。ケースクロスオーバー研究。
  • ※5症例対照研究......ある病気にかかった集団が要因(薬を飲んでいた・飲んでいなかったなど)にさらされていたかどうかを調べ、病気にかかっていない集団でも同じように調査、2つの集団を比較することで要因と病気の関連を評価する研究手法。観察研究の一つ。ケースコントロール研究。

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