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乳がん検診導入から30年、年間5万人が過剰診断か―米国

 2012年11月28日 10:01

 米国では、40歳以上の女性を対象としたマンモグラフィー(乳房レントゲン撮影)による乳がん検診の普及から約30年が経過した。以前は診断が困難だった非浸潤性乳管がん(最も早期の乳がん)も多く発見できるようになり、マンモグラフィー検診は乳がんによる死亡率低下に大きく貢献しているはず―。しかし、米オレゴン健康科学大学のArchie Bleyer氏らは「1976~2008年の米国のデータを検討した結果、早期がんの診断件数は予想通りマンモグラフィー検診の普及により倍増していたが、進行がんの診断件数の減少はわずかにとどまっており、マンモグラフィー検診による過剰診断の懸念を払拭することができない」と、11月22日発行の米医学誌「New England Journal of Medicine」(2012; 367: 1998-2005)で指摘した。過剰診断は推計で年間5万人以上に上るという。

進行がんでの診断は8%減

 Bleyer氏らは、米国のがん登録プログラムのデータを使い、1976~2008年の40歳以上女性における乳がん発見率の推移を解析した。

 その結果、マンモグラフィー検診の導入以来、早期乳がんの年間発見件数は女性10万人当たり112人から234人へとほぼ倍増していることが分かった。

 一方で、進行期に至って初めて診断されるケースは、女性10万人当たり102人から94人へと約8%減少したにすぎず、進行乳がんの中でも5年生存率が25%と予後不良な遠隔転移例に限ると、マンモグラフィー検診による影響を確認することができなかった。

 また、マンモグラフィー検診の対象となっていない40歳未満女性の乳がん発症率を見ると、調査対象の全期間を通じ、早期がん、進行がんともにほとんど変化していないことも分かった。

 Bleyer氏らは、早期がんと進行がんの発見数の推移から「単純に考えると、早期に診断がつけられるようになった122人のうち8人だけが、(診断できなかったら)進行期にまで移行するとの見方もできる」としている。

死亡率低下に与えた影響を再検証すべきか

 ホルモン補充療法(HRT)や40歳未満女性での乳がん発症率の傾向を加味しても、過去30年間に130万人の米国人女性で過剰診断されていたことになるという。

 さらに、Bleyer氏は「2008年だけで7万人以上の女性で乳がんが過剰診断されており、これは新規に乳がんと診断された全件数の31%に相当する。基準を変えて進行がんの発症率が最も高かった1985年に合わせ、乳がん発症率自体が毎年0.5%ずつ上昇すると仮定しても、2008年時点で5万人以上が過剰診断と判定された」と強調した。

 乳がんによる死亡率は40歳未満の女性でも低下しているとのデータもあり、治療法の発展による成果を差し引いて、マンモグラフィー検診の普及が死亡率低下に与えた影響を再検証する必要があるのかもしれない。

 なお、日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」では、マンモグラフィー検診は50歳以上に対してはグレードA(十分な科学的根拠があり、積極的に実践するよう推奨する)、40歳代に対してはグレードB(科学的根拠があり、実践するよう推奨する)の推奨度となっている。

(編集部)

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