潰瘍性大腸炎とクローン病、期待される新しい薬物療法
2012年12月20日 11:47
原因不明の難病である潰瘍性大腸炎、クローン病の治癒も夢ではない―。強力な薬の登場でその足掛かりが見えてきた。東京医科歯科大学医学部付属病院消化器内科の長沼誠講師は「治療に手を焼く患者さんの粘膜が治癒し、手術が不要になるほどの効果が期待できる」と話す。
慢性の炎症性疾患
潰瘍性大腸炎やクローン病は腹痛、下痢、血便などを繰り返す慢性炎症性腸疾患だ。潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症や潰瘍が生じる病気で、わが国の患者数は約12万人。クローン病は、大腸や小腸をはじめ消化管のどこにでも炎症や潰瘍が生じる病気で、患者数は約3万人。いずれも免疫の異常などが原因と考えられているが、明らかではない。
両疾患とも薬物療法ではステロイド薬が主に使われるが、ステロイド薬で効果が上がらなかったり、再発のために投与を中止できなかったりするケースがある。薬物治療で改善しない場合は手術が検討される。
腸管粘膜が治癒
新しい薬物療法として注目されているのが、免疫抑制剤のタクロリムスと抗TNFα抗体製剤だ。通常、体内に異物が侵入すると免疫細胞はサイトカインという物質を作って攻撃するが、クローン病などでは、異物がないのにサイトカインの一つであるTNFαが過剰に作られ、炎症を起こすと考えられている。抗TNFα抗体製剤はTNFαの働きを抑え、タクロリムスも炎症性のサイトカインの働きを抑えることで効果を発揮する。
長沼講師によると、ステロイド治療では効果が不十分な潰瘍性大腸炎患者にタクロリムスを投与すると、3分の2で効果が見られた。難治のクローン病患者に抗TNFα抗体製剤を投与すると、3分の2で効果が見られ、投与を1年継続すると、その半数で腸管粘膜が治癒した。海外では、抗TNFα抗体製剤を長期投与したクローン病患者で薬が必要なくなるほど状態が改善した例もあるという。
長沼講師は「長期投与の安全性も確認されており、炎症性腸疾患も治る時代が見えてきました」と話している。
(編集部)
2011年12月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)