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吐き気止めは"つわり止め"に使える? 安全を検討

 2013年03月05日 11:51

 妊娠初期に起きるつわりは、頭痛や眠気のほか、においに敏感になったり食べ物の好みが変わったりするが、最もつらい症状が吐き気と嘔吐(おうと)。人によって症状の重さは異なるが、経験者の中には「薬で治まれば...」と思った人も少なくはないだろう。こうした中、日本では抗がん薬の副作用のみで使用が認められている吐き気止め「オンダンセトロン」(商品名ゾフランなど)を妊婦が服用しても、胎児に悪影響を及ぼさないとするデンマークの研究結果が、米医学誌「New England Journal of Medicine」(2013; 368: 814-823)に発表された。日本でも"つわり止め"として使えるようになるのか注目される。

流産、死産、先天異常などのリスク上昇示されず

 報告したデンマーク血清学研究所のBjörn Pasternak氏らは、2004年1月~11年3月に出産(死産・流産を含む)したデンマークの女性60万8,385人を対象に、オンダンセトロンの胎児に対する影響を検討した。このうち、妊娠中にオンダンセトロンを服用したのは1,970人(0.3%)で、服用回数は30回(中央値)だった。

 検討の結果、オンダンセトロンを服用することは、自然流産、死産、先天異常(染色体異常やオンダンセトロン以外の原因が明確なものを除く)、早産、低出生体重、胎内発育遅延の全てで、リスク上昇との関連が示されなかった。

 日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会のガイドライン(指針)では、つわりの重症型である「妊娠悪阻(おそ)」の治療として、「少量頻回の食事摂取と水分補給を促す」「脱水に対して十分な輸液を行う」とともにビタミンB1の投与が推奨度A、ビタミンB6が推奨度Cとされている。しかし、いずれも吐き気を抑えるというよりも、栄養補助などとしての意味合いが強いだろう。

 ビタミン剤以外では「ジメンヒドリナート」(商品名ドラマミン)や「メトクロプラミド」(同プリンペラン、テルペラン)などが使われているようだが、いずれの薬剤も妊娠悪阻への適応はなく、有効性と安全性の両面から妊娠悪阻治療の切り札となる薬は登場していない。

 つわりが起きる時期は、薬による胎児の奇形が発生しやすい時期でもあるため、安全性に関するエビデンス(根拠となる研究結果)の確立は必須。世界的には使われているものの、日本では「妊娠中の投与に関する安全性は確立していない」と、添付文書に記載されているオンダンセトロンが妊娠悪阻治療薬の一つとなるのかどうか、今後に注目だ。

 なお、妊娠悪阻の予防法としては受精前からの妊婦用マルチビタミン(ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D、E、葉酸、ミネラルなどを含む)を服用することが挙げられている。

(編集部)

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