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がん治療後の「リンパ浮腫」、腕や脚がむくむ

 2013年03月05日 12:01

 がん治療で、リンパ節の切除後に後遺症として起こり、多くの患者を悩ませているリンパ浮腫。がん研有明病院(東京都)婦人科の宇津木久仁子副部長(術後リンパケア担当)は「がん治療はしばしば後遺症を伴います。予防と対処のための知識は大切です」と説明する。

女性のがんで多い

 リンパ浮腫は、流れが悪くなったリンパ液が皮下にたまり、腕や脚などにむくみが生じる状態。ほとんどが、がんの手術などでリンパ節郭清(かくせい)と呼ばれる切除を行った後に起こる後遺症だ。乳がん、子宮頸(けい)がん、子宮体がん、卵巣がんなど女性特有のがんの手術後に多いが、前立腺や大腸のがん手術後に起こることもある。

 むくみは、腕や脚の付け根の方から始まることが多い。乳がんでは患部側、他のがんでも片側から始まるのが一般的だ。むくむと腕や脚が重苦しく、動かしにくくなる。靴が履けなくなる、服がきつくなり、外出がおっくうになり気分が落ち込む。進行すると、リンパ液に含まれる成分が作用して皮膚が硬くなることがある。

弾性ストッキングなどで治療

 むくみはリンパ節を切除した全ての人に起こるわけではなく、起こさないような生活を送ればある程度の予防は可能だ。

 まず、リンパ液の流れを良くする適度な運動。散歩から始め、体の反応を見て頑張り過ぎないようにする。例えば、水中ウオーキングがお勧めだ。婦人科がんでリンパ節を切除した場合は、正座などリンパの流れを妨げる姿勢は避ける。

 むくんだ部分は細菌が感染し、発赤・痛み・発熱を伴う蜂窩織(ほうかしき)炎を起こしやすい。皮膚を傷つけないよう注意し、虫よけスプレーや乾燥・かゆみから守る保湿クリームを使う。

 「リンパ浮腫の半数は手術後1年以内に起こりますが、10年たった後に起こることもあります。むくみを感じたら、手術を行った医師に早めに相談してください」と宇津木副部長。

 治療は、リンパ液の流れを良くするマッサージであるリンパドレナージ、弾性ストッキングや弾性スリーブ(袖)の使用、運動やスキンケアを含む生活指導を合わせた複合的治療が行われている。弾性着衣は健康保険が使えるが、リンパドレナージは行える人材が不足していることと保険適用でないことが患者にとって負担となっている。

(編集部)

2012年3月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)

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