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ステロイドでエコノミークラス症候群リスクが2倍以上に

 2013年04月12日 18:00

 皮膚炎からぜんそく、関節リウマチまでさまざまな場面で使われているステロイド薬。効き目が強い半面、副作用が多いことでも知られているが、このたび新たな副作用の可能性が指摘された。デンマーク・オーフス大学のSigrun A. Johannesdottir氏らは、ステロイド薬を使うと「静脈血栓塞栓(そくせん)症」(いわゆるエコノミークラス症候群)のリスクが上昇すると、4月1日発行の米医学誌「JAMA Internal Medicine」(電子版)に報告。リスクは90日以内使った場合で2倍以上で、そのうちの新たに使い始めた人に限ると3倍以上だったという。

デンマーク人40万人以上を検討

 ステロイド薬には飲み薬の経口剤、塗り薬や目薬などの外用剤、注射剤、座剤がある。経口剤と注射剤は「全身性ステロイド薬」とも呼ばれ、体全体の炎症などを抑える一方、副作用も全身に出る。その点、特定の部分にしか使わない外用剤は副作用が少ないとされている。ぜんそくの治療に使う吸入剤は外用剤の仲間だ。

 Johannesdottir氏らは今回、2005~11年のデータから、デンマークに住む静脈血栓塞栓症患者3万8,765人と、出生年と性別が一致する38万7,650人の計42万6,415人を対象に、静脈血栓塞栓症と診断されたからどのくらい前にステロイド薬を使ったかを検討した。90日以内を「現在の使用」、91~365日を「最近の使用」、1年以上前を「過去の使用」に区分。「現在の使用」グループのうち最初に使ったのが90日未満の場合を「新規使用」、それ以外を「継続使用」とした。なお、年齢は中央値で67歳、53.7%が女性だった。

吸入ステロイドでもリスク上昇

 検討の結果、全身性ステロイド薬の使用は静脈血栓塞栓症になるリスクの上昇と関連しており、「現在の使用」グループで2.31倍、「最近の使用」グループで1.18倍だった。さらに「現在の使用」グループのうち、「新規使用」は3.06倍、「継続使用」は2.02倍で、新たに使い始めた人で3倍以上のリスク上昇が見られた。

 全身性ステロイド薬の種類別では、ヒドロコルチゾンを除く検討した全ての全身性ステロイド薬でリスクの上昇が認められ、特に「プレドニゾロン」と「プレドニゾン」(日本未承認)で顕著だった。累積用量(これまでどのくらいの量を使ったか)別では、プレドニゾロン換算で10ミリグラム以下と比べ、1,000~2,000ミリグラムで1.98倍、2,000ミリグラム以上で1.60倍と高かった。

 ぜんそくなどの治療に使われる吸入ステロイド薬は「新規使用」のみで2.21倍のリスク上昇が認められ、潰瘍性大腸炎などの治療に使われる注腸ステロイド薬は「新規使用」で2.17倍、「継続使用」で1.76倍のリスク上昇が見られたという。

危険性の高い肺塞栓症との関連が顕著

 全身性ステロイド薬の影響を、静脈血栓塞栓症の中でも「深部静脈血栓症」(体の奥深くにある静脈が詰まる病気)と危険度が高い「肺塞栓症」(他で発生した血栓が肺に流れて肺動脈が詰まる病気)に分けて見たところ、前者よりも後者との関連が顕著な傾向が認められた。

 Johannesdottir氏らは、今回の研究のポイントとして、静脈血栓塞栓症を引き起こす可能性を持つ炎症がない状態でも関連が確認されたことなどを紹介。「90日以内の新規使用では1,000人当たり年間11人VTEが増加し、累積用量の増加でもリスクは上昇する。医師はこの関連を認識すべきである」と結論付けている。

(編集部)

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