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受刑者への禁煙プログラム、出所後の継続率は? 米研究

 2013年04月12日 12:35

 長い刑期を終え、刑務所の外に出てまず、たばこに火をつける―。映画のワンシーンのようだが、制約の多い生活から自由に戻ったことの象徴として、最初にするのが喫煙というケースは少なくないだろう。こうした中、米ブラウン大学プライマリーケア・予防センターのJennifer G. Clarke氏らは、受刑者に薬を使わない禁煙プログラムを実践した場合、出所から3カ月後に禁煙を続けている割合が6.6倍だったことを、4月8日発行の米医学誌「JAMA Internal Medicine」(電子版)に発表した。

8週以内に出所予定の262人で検討

 米国では、6割の刑務所が施設内を禁煙にしている。しかし、約4,530万人に上るとされる成人の喫煙者のうち8人に1人は服役経験者で、出所から数週間以内に9割が喫煙を再開するという。

 そこでClarke氏らは、自身らが開発した受刑者対象の禁煙プログラム「WISE」を使った研究を実施。敷地内が全面禁煙で、禁煙プログラムを行っていない、米北東部の大規模な州立刑務所に服役しており、入所前の喫煙本数が1日10本以上、8週以内に刑期を終える予定の18歳以上の男女262人を対象とした。WISEは、本人に抱えている問題を認識させ、治療に立ち向かう動機を持つよう促す「動機付け面接法」と、抱えている問題に対しての考え方を柔軟にして治療に取り組むよう導く「認知行動療法」を行うプログラムだ。

 健康に関連したビデオを視聴するグループ(対照群、125人、平均年齢35.4歳、男性64.8%)と、WISEを行うグループ(WISE群、122人、平均年齢35.7歳、男性65.6%)にランダムに割り付け、両群で週1回のセッションを6週間実施。出所後3週での禁煙継続率などを評価した。 出所後に喫煙する意向がある人の割合は、対照群で49.2%、WISE群で53.3%。入所前の喫煙年数と1日当たりの喫煙本数は、それぞれ19.7年・22.6本、19.1年・20.7本だった。

長期間の服役も禁煙継続率高い

 出所から3カ月後に尿のコチニン(ニコチンの代謝物)濃度で禁煙しているかどうかを調べたところ、WISE群の禁煙を継続していた人の割合は対照群の6.6倍だった。

 また、服役期間が6カ月未満に比べて6カ月以上で4.6倍、人種ではヒスパニック系以外に比べてヒスパニック系で3.2倍の禁煙継続率だったという。

 今回の結果に対して、Clarke氏らは「強制的に禁煙する環境にいるだけでは禁煙を続けることにつながらず、動機付け面接法と認知行動療法を組み合わせた禁煙プログラムにより、出所3カ月後の禁煙継続率が6.6倍に上ることが示された」と結論。薬による治療を取り入れなかった理由については、「すでに長期間の禁煙をしている人への有効性を示すエビデンス(科学的根拠となる研究結果)が確認できなかったため」とし、今後は出所後の禁煙継続を目的とした介入方法の検討が必要と結んだ。

(編集部)

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