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生物学的製剤それぞれの特徴は?

 2013年04月15日 18:00

5.生物学的製剤それぞれの特徴は?

5-1レミケードってどんな薬?

特徴
TNF阻害薬・抗体製剤・点滴

 レミケード(一般名インフリシキマブ)は、日本で初めて関節リウマチ治療薬として認可された生物学的製剤です。そのため、使用実績が最も豊富で、効果や副作用についての情報がそろっています。TNF阻害薬の一つであり、炎症の元となるTNFαを抑えるだけでなくTNFαを作り出す細胞を壊す力も持っている抗体製剤です。

 最大の特徴は効果が速く現れる点で、早い時期から自覚症状を軽減してくれます。関節破壊を抑えるだけでなく、骨びらんを修復する効果も認められています。レミケードによって寛解(症状が落ち着いて安定した状態)が維持できた患者の約半数は、この薬を休止しても寛解が維持できたという報告があります。生物学的製剤を使わなくても寛解を維持できるバイオフリー寛解や、抗リウマチ薬など全ての薬剤を使わなくても寛解が維持できるドラッグフリー寛解に達した割合が、生物学的製剤の中で最も高いのも特徴です。効果や状態に応じて投与間隔や投与量を調節できる点も、自分に合った治療目標を目指す上でメリットとなります。レミケードを使用する際には、メトトレキサート(MTX)との併用が必須となっています。

レミケードの作用
レミケードの使い方

 レミケードは病院で点滴してもらう薬です。標準使用量は3mg/kg(体重1kg当たり3mg)、つまり体重50kgの人では150mgを使用します。点滴にかかる時間は一般的に2時間程度です。使用3回目以後は、それまでの使用時に問題がなければ点滴時間を短縮することもできます。

 点滴を受ける間隔は、初回、2週間後、6週間後、以降は8週間ごとになります。最初の3回は間隔が短いのですが、その後は2カ月に1回の点滴で効果が持続します。効果が不十分な場合は、徐々に10mg/kgまで増量するか、または6mg/kgにして最短4週間隔まで間隔を詰めるなど、効果や状態に応じて調節できます。

レミケードの使用スケジュール
レミケードの薬剤費

 レミケードの1バイアル(100mg)は8万9,536円です。標準使用量(3mg/kg)を用いる場合、体重が66.6kgまでの人では2バイアル、66.7〜100kgの人では3バイアルが必要となります。4回目の点滴以降は2カ月に1回となり、費用の負担が隔月に集中します。このため、高額療養費制度に該当しやすく、条件次第では他の薬に比べて自己負担額を低く抑えられます。体重、使用量、使用間隔によってかなり異なりますので、ここでは一例を挙げて紹介します。

レミケードの薬剤費

5-2 エンブレルってどんな薬?

特徴
TNF阻害薬・受容体製剤・皮下注射・在宅自己注射が選べる

 エンブレル(一般名エタネルセプト)は、2005年から日本で使用が開始されたTNF阻害薬です。完全ヒト型製剤で中和抗体が出ることが少なく、受容体製剤なので効果や副作用が抗体製剤に比べて比較的緩やかだといわれています。そのため、使い続けられる人が多く、高齢の人にも向いています。薬剤が血液中にとどまる期間が短いため、使用回数が週1〜2回と多くなりますが、この特徴は副作用をコントロールしやすいという長所にもつながります。

 皮下注射であり在宅自己注射を選べること、用量や使用間隔を細かく調節できることが利点です。MTXの服用は必須ではないので、MTXを服用できない人でも使えますが、併用すると効果が高まります。妊娠中はMTXは使えませんが、エンブレルはMTXを必要としないので近々妊娠を希望している人にも適しています。また、薬が胎盤を通過する胎盤移行がほとんどないため、有益性がリスクを上回る場合には妊娠中の使用を検討する余地はあるでしょう。エンブレルは注射針を刺す時や薬液を体内に注入する時に、痛みを感じることがあるとの報告があります。

エンブレルの作用
エンブレルの使い方

 エンブレルは皮下注射で、在宅自己注射が選べます。たいていの人が在宅自己注射で使用しています。標準使用量は50mg/週で、25mgを週2回または50mgを週1回用います。10~25mgを週2回や25~50mgを週1回など、効果や状態に応じて調節することができます。50mg/週より増量したり、週1回より投与間隔を延ばすことはできません。

 エンブレルには従来のいわゆる注射器(シリンジ)に加えて、2013年6月からペン型のオートインジェクター(ペン)も登場しました。

エンブレルの使用スケジュール
エンブレルの薬剤費

エンブレル25mgのシリンジは1万5,746円、50mgは3万1,069円です。
エンブレル50mgペン型オートインジェクターは3万1,252円です。

エンブレルの薬剤費

5-3 ヒュミラってどんな薬?

特徴
TNF阻害薬・抗体製剤・皮下注射・在宅自己注射が選べる

 ヒュミラ(一般名アダリムマブ)は日本では2008年に承認されました。レミケードと同じくTNF阻害薬の抗体製剤ですが完全ヒト型抗体の皮下注射製剤で、自己注射も可能です。MTXの併用は必須ではありませんが、効果が高まるので併用が望ましいとされています。

 ヒュミラは、注射針を刺す時や薬液を注入する際に強い痛みを感じるとの報告があります。皮膚をつまみ上げた指と指の幅が1cm以上ある場所を選んで、皮膚に対して30〜60°の角度で注射針を刺します。薬液を注入する際の痛みは、冷蔵庫から取り出して10〜15分置くか手の平で1分ほど温める、できるだけゆっくり薬液を注入する...などの工夫によって軽減を図ります。皮疹や注射部位反応が出現しやすいのですが、MTXとの併用で抑えられ、使用回数を重ねるうちに減っていきます。

 同じ皮下注射のエンブレルが週1〜2回の注射が必要であるのに対して、2週間に1回で済むことも特徴です。リウマチによる症状・臨床検査値の異常がなくなる完全寛解や、生物学的製剤を使わなくても寛解が維持できるバイオフリー寛解を期待できる可能性が高いという報告も、レミケードに次いで出ています。

ヒュミラの作用
ヒュミラの使い方

 ヒュミラは皮下注射で、在宅での自己注射が選べます。在宅自己注射で使用するのが一般的です。標準使用量は2週に1回40mgです。80mgに増量できますが、その場合はMTXの併用が認められていません。

ヒュミラの使用スケジュール
ヒュミラの薬剤費

ヒュミラの1シリンジ(40mg)は6万5,144円です。

ヒュミラの薬剤費

5-4シンポニーってどんな薬?

特徴
TNF阻害薬・抗体製剤・病院で受ける皮下注射

 シンポニー(一般名ゴリムマブ)は、日本では2011年に承認された新しい生物学的製剤です。TNF阻害薬としては4つ目の薬で、レミケードやヒュミラと同じ抗体製剤、完全ヒト型抗体です。薬液が中性で注射部位反応が少ないことなど、他の2つの皮下注射の薬に比べて注射時の不快感や痛みが少ないとの報告があります。1カ月に1回の診察時に注射するだけで済み、注射が苦手な人にも比較的受け入れやすい特徴を持っています。MTXの併用は必須ではありませんが、効果が高まるので併用が望ましいとされています。

シンポニーの作用
シンポニーの使い方

 シンポニーは月1回(4週間に1回)の診察時に使う皮下注射です。在宅での自己注射は選べません。標準使用量はMTXを併用する場合は50mg、状態に応じて100mgを使用します。MTXを併用しない場合は100mgを使用します。

シンポニーの薬剤費

シンポニーの1シリンジ(50mg)は12万6,622円です。

シンポニーの薬剤費

5-5 アクテムラってどんな薬?

アクテムラ

特徴
IL-6受容体阻害薬・抗体製剤・点滴・皮下注射・在宅自己注射

 アクテムラ(一般名トシリズマブ)は、日本で開発された唯一の国産生物学的製剤です。2008年に日本で関節リウマチ治療薬として承認され、2009年に欧州、2010年に米国でも承認されました。炎症の元となるIL-6受容体に対する抗体製剤で、中和抗体の出現は少ないとされています。

 MTXが内服できない場合には、生物学的製剤の中で最も効果が高いことが大きな特徴です。TNF阻害薬による治療で十分な効果が得られなかった場合にも、効果が期待できます。

 炎症反応を示すCRPの上昇を抑えるため、感染症にかかったときに気付くのが遅れてしまう可能性があります。感染症にかかる可能性が低い比較的年齢が若くてMTXの内服ができない人、例えば、近いうちに妊娠を希望している人などに適しています。

アクテムラの作用
アクテムラの使い方

 アクテムラは病院で点滴してもらう薬です。標準使用量は8mg/kgで、例えば体重50kgの人では400mgになります。増量や投与間隔の調整はできません。点滴にかかる時間は1時間程度です。点滴を受ける間隔は4週間に1回なので、1カ月に1回の通院時に受けられます。

 アクテムラは2013年3月に皮下注製剤が登場し、在宅自己注射も選べるようになりました。皮下注製剤を使う場合、病院または自宅で2週間に1回皮下注射します。皮下注射に用いる製剤には、いわゆる注射器の形をした「シリンジ」と、注入ボタンを押すだけで薬液が注入される「オートインジェクター」があります。どちらも箱から取り出し、テーブルの上に30分間置いて室温に戻してから使用します。シリンジは、注射器の中の薬液が空になるまでゆっくりと押し切ります。オートインジェクターは、20秒かけて自動的に薬液が注入されます。

アクテムラの使用スケジュール
アクテムラ点滴の薬剤費

 アクテムラ80mgのバイアルは1万8,592円、200mg 4万5,807円、400mg 9万0,611円です。体重によって使用量が変わり、それに応じて80mg、200mg、400mgを組み合わせていくため、薬剤費の算出は複雑になります。ここでは一例を挙げて紹介します。

アクテムラ点滴の薬剤費
アクテムラ皮下注射の薬剤費

 アクテムラ皮下注製剤162mgシリンジは3万9,143円、オートインジェクターは3万9,291円です。体重による使用量の違いはありません。

アクテムラ皮下注射の薬剤費

5-6 オレンシアってどんな薬?

オレンシア

特徴
T細胞活性化抑制薬・受容体製剤・点滴・皮下注射・在宅自己注射

 オレンシア(一般名アバタセプト)は、2010年に承認された生物学的製剤です。免疫をつかさどるTリンパ球(T細胞)の働きを抑えることで、TNFαやIL-6など炎症の元となる炎症性サイトカインが過剰に作られるのを防ぎます。他の生物学的製剤が炎症性サイトカインを標的にしているのに対し、オレンシアはそれを作り出すT細胞の働きを抑えるため、効果が現れるのは他の生物学的製剤よりもやや遅いようです。ただ、標的が他の薬と異なるので、TNF阻害薬で効果が不十分な場合にも効果が得られる可能性があります。MTXを内服しなくても使え、比較的安全性が高く、副作用が少ないといわれているので、高齢の人にも向いています。

オレンシアの作用
オレンシアの使い方

 オレンシアは病院で点滴してもらう薬です。使用量は体重によって異なり、体重60kg未満では500mg、60〜100kgでは750mg、100kg超では1gです。点滴を受ける間隔は、初回、2週間後、4週間後、以降は4週間ごとになります。増量や投与間隔の調節はできません。点滴にかかる時間は30分程度です。

 オレンシアは2013年6月に皮下注製剤が登場し、在宅自己注射も選べるようになりました。皮下注製剤を選ぶ場合、初めてオレンシアでの治療を開始する日にまず点滴製剤で点滴を行った後、同じ日に皮下注射を行います。その後は、週1回皮下注射をします。最初から週1回の皮下注射から開始することもできます。

オレンシアの使用スケジュール
オレンシア点滴の薬剤費

 オレンシアの1バイアル(250mg)は5万4,995円です。4週間に1回の使用間隔になってからの1月にかかる薬剤費は下記のように体重によって異なります。

オレンシア点滴の薬剤費
オレンシア皮下注射の薬剤費

 オレンシア皮下注製剤125mg 1シリンジは2万7,947円です。体重による使用量の違いはありません。

オレンシア皮下注射の薬剤費

5-7 シムジアってどんな薬?

特徴
TNF阻害薬・抗体製剤・皮下注射・在宅自己注射が選べる

 シムジア(一般名セルトリズマブペゴル)は、日本では2013年に発売された7つ目の生物学的製剤です。レミケード、ヒュミラ、シンポニーと同じ抗体製剤で、TNF阻害薬としては5つ目となります。構造がこれまでのTNF阻害薬と異なることが特徴で、Fc領域という細胞を傷害したり胎盤への移行と関係する部分を取り除き、Fab'領域というTNFαに結合して作用する本体部分に、ポリエチレングリコールという高分子化合物を結合(これを「ペグ化」といいます)した、初めてのペグ化抗TNFα製剤です。細胞への傷害や注射部位反応が少ないといわれています。シムジアはMTXとの併用が必須ではなく、理論上、胎盤への移行がないと考えられるため、妊娠を希望する場合にも使用できる可能性があるといわれています。

シムジアの作用
シムジアの使い方

 シムジアは皮下注射で、在宅での自己注射が選べます。1回400mgを初回、2週後、4週後に使用し、その後は1回200mgを2週間隔で使用します。症状が安定した後には、1回400mgを4週間隔で使用することもできます。

シムジアの使用スケジュール
シムジアの薬剤費

シムジアの1シリンジ(200mg)は6万3,494円です。
使用4回目以降の1カ月当たりの概算(400mg/4週)は
63,494円×2シリンジ=126,988円
3割負担の場合、38,096円

シムジアの薬剤費

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