アスピリンのがん予防効果、ある遺伝子変異には認められず
2013年07月02日 12:15
近年、大腸がんを予防することが期待されている解熱薬として有名なアスピリンだが、ある遺伝子が変異している人では効かない可能性があることが分かった。米ダナ・ファーバーがん研究所のReiko Nishihara氏らが、6月26日発行の米医学誌「JAMA」(2013; 309: 2563-2571)に報告した研究結果によると、BRAFという遺伝子が正常な人ではアスピリンの服用で大腸がんを発症するリスクが下がったが、BRAF遺伝子が変異している人ではリスクの低下が認められなかったという。
大腸がん患者の10~15%に見られる
大腸がんは国内で2番目に多いがんで、がんによる死亡としては第3位。米国では3番目に多い。大腸がん患者のうち10~15%に見られるのがBRAF遺伝子の変異だ。アスピリンががんリスク下げるという研究結果が報告されているが、BRAF遺伝子が変異している人では効き目が良くないことが指摘されている。
Nishihara氏らは、米国の医療従事者を対象とした二つの研究(NHS、HPFS)のアスピリン服用者5万2,190人(1週間に2錠以上のアスピリンを服用している人、平均年齢62歳)と非服用者7万4,588人(2錠未満の人、同60歳)を対象に検討。大腸がんを発症したのは1,226人だった。
遺伝子正常では服用量多いほどリスク低下
BRAF遺伝子が正常な場合、アスピリン非服用グループに比べ、服用グループでは大腸がんを発症するリスクが27%低下(1,000人当たり年間9.7人減)していることが分かった。一方、BRAF遺伝子に変異がある場合、アスピリンを服用しているかどうかで大腸がんリスクに変化はなかった。
また、BRAF遺伝子が正常な場合、アスピリンを週に14錠以上服用している人では、非服用グループに比べて大腸がんリスクが57%低下(1,000人当たり年間19.8人減)と、服用量が増すほどリスクが低下することも分かった。しかし、BRAF変異では服用量が増えてもリスクの変化は見られなかったという。
以上の結果についてNishihara氏らは、BRAF変異型はアスピリンに対する感度が低い可能性を指摘している。
(編集部)