リンゴで虫歯予防できる?
2013年10月01日 06:00
リンゴを食べると歯磨きと同じ効果がある、と聞いたことがあります。本当でしょうか。それと昔、リンゴを丸ごとかじる歯磨きのCMがやっていましたが、歯槽膿漏(歯周病)の予防にもなるんでしょうか。
横須賀(女性50代)
リンゴを食べただけで虫歯予防はできません。
「1日1個のリンゴは医者知らず」ということわざがあるほど、リンゴには健康に対する優れたさまざまな効果があるといわれています。リンゴに含まれているリンゴポリフェノールは歯垢(しこう)を付きにくくし、フッ素は歯質を強くする効果があると考えられているので、虫歯の予防効果があると期待されているのでしょう。
しかし、2011年に英国の歯学研究所が「りんごは炭酸飲料よりも4倍、歯に悪い」との研究結果(「Journal of Dentistry」2011; 39: 811-816)を発表しています。果物は酸性であり、糖分も含んでいるため、虫歯になりやすい要素を持っています。ただ、果物でもグレープフルーツは歯への悪影響は少なかったとの結果です。リンゴもリンゴそのものが悪いわけではなく、リンゴの食べ方に問題があり、「ゆっくり食べるとリンゴの酸性度によって歯はダメージを受ける」との見解を述べています。
リンゴを食べただけで虫歯の予防は難しそうです。虫歯や歯周病にならないためには、歯磨きの習慣など日々の努力が大切です。ダイエットなど医学の領域でもそうですが、歯科の領域でも魔法のように何でも効く食べ物というのはないのでしょう。
昔、確かにリンゴを丸ごとかじる歯磨きのCMが放映されていましたが、「リンゴをかじると歯茎から血が出ませんか?」と、硬いリンゴをかじることで歯槽膿漏の有無を尋ねているものでした。りんごが虫歯や歯槽膿漏の予防になることを宣伝していたわけではなかったと記憶しています。他のCMを指しているのでしたら、ごめんなさい。
中野 里美(なかの さとみ)
1990年、東京女子医科大学卒業後、慶應義塾大学医学部内科学教室に入局。都立広尾病院、国立病院機構栃木病院などを経て、2007年から三菱UFJニコス株式会社診療所勤務。同社において初代統括産業医として、社員の健康管理を行っている。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定産業医、労働衛生コンサルタント。