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危険運転の処罰対象にてんかんなど、8学会が修正を要望

 2013年11月13日 10:30

 近年、てんかん患者のてんかん発作が原因とされる重大な自動車事故が相次いで発生し、社会問題化している。昨年10月から検討を重ねてきた法務省の結論を受け、今年4月には「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」案が国会に提出、11月5日に衆議院において全会一致で可決され、今国会で成立の見通しだ。同法案では、危険運転致死傷罪の対象として、てんかんや統合失調症など特定の「病気」※1が明記されているが、これに対して日本精神神経学会などはこれまで、「これらの病気に対する差別を助長する」などとして削除を求めてきた(関連記事)。衆議院で可決した翌6日、同学会を含む8つの学会※2は、「病気」ではなく「病気の症状」に修正すべきとする要望書を改めて参議院に提出した。

自動車事故への危険性に「エビデンス」なし

 てんかんや統合失調症、うつ病、双極性障害など自動車運転に支障を来す恐れのある病気を持つ人への厳罰化に対しては、日本精神神経学会、日本てんかん学会、日本うつ病学会などはこれまでもその効果に疑問を呈し、同法案が差別法になりかねないと危惧してきた。「一定の病気に関する条項を削除すべき」などとして、9月30日には衆議院に対して要望書を提出した。

 その理由として、「これらの病気による事故率が他の要因と比較して高いという医学的根拠はなく、法の下の平等に反し、これらの病気に対する差別を助長し、病気の早期発見や適切な治療を妨げる」ことなどを挙げている。事実、日本てんかん学会法的問題検討委員会の松浦雅人委員長(東京医科歯科大学教授)によると、国会答弁でもこうしたエビデンス(根拠となる研究結果)がない旨を認める発言がなされていたという。

「症状」なくても「病気」あれば対象? 飲酒や薬物摂取と同等扱いに疑問

 同学会などでは、要望書の提出のほか、啓発イベントも実施してきた。しかし、同法案は11月5日に衆議院で可決された。翌6日、上記を含む8つの学会は、改めて異議を唱えるとともに、修正を求める要望書を改めて参議院に提出した。

 今回提出された再要望書では、これまで条項そのものの削除を求めていたのに対し、"病気"ではなく"病気の症状"に修正することを訴えている。その理由について、「同条項の適用が特定の病気に対してではなく、症状に着目してなされることが本法の趣旨であるはず」と記載するとともに、「特定の病気を持ちながらも症状を有しないものに対する不当な不利益や特定の病気を持つものへの差別を生じるおそれがある」とした。つまり、患者であっても治療などで症状が抑えられていれば、対象とすべきでないということだ。

 同法案は、今国会で成立の見通しという。なお、一定の病気に関する条項は第三条第二項で、第一項には、「アルコールまたは薬物の影響により、その走行中に正常な運転に死傷が生じるおそれがある状態で」と書かれている。統合失調症やてんかんなどの病気と、アルコールや薬物摂取とを、同等に扱っている点に疑念が残る。

  • ※1統合失調症、てんかん、再発性失神、無自覚性の低血糖症、躁(そう)うつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害。なお、法令上、「躁うつ病」はうつ病と双極性障害を含む)
  • ※2日本精神神経学会、日本てんかん学会、日本うつ病学会、日本認知症学会、日本不整脈学会、日本睡眠学会、日本神経学会、日本脳卒中学会。なお、日本脳卒中学会はこの度の再要望で新たに名を連ねた

(松浦 庸夫)

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