製薬企業のパーティーでテロを目撃

　大西洋へ原油を流出させた石油王の屋敷に、大量の原油が流し込まれたー。"目には目を"をモットーに環境テロ活動を続ける「イースト」は「罪を犯した者には、犠牲者と同じ恐怖を味わわせる」と犯行声明を出す。そして、「世界的な悪徳企業3社に、今後半年間で制裁を加える」と予告する。

　契約企業をテロ行為から守る調査会社に採用された元FBI捜査官のジェーンは、代表者シャロンから、イーストへの潜入捜査を任命される。同棲している恋人にはドバイへの出張と偽ると、ジェーンは髪を金髪に染め、バックパッカー「サラ」に変身。放浪中に知り合った青年を介して、イーストのアジトに身を寄せることに成功する。

　森の中の廃屋に寝泊まりし、街で拾い集めてきた野菜のくずなどで空腹をしのぐイーストのメンバーたちの生活に圧倒されるサラ。しかし、次のテロ計画のために仲間に加えられてしまう。何も知らされないまま、製薬企業マッケーブ・グレイのCEO（最高経営責任者）のホームパーティーに出席したサラは、出席者のシャンパンに同社の新薬を混ぜ入れ、飲ませるという今回のテロ計画を知る。すぐさまシャロンに電話するが、「マッケーブ社は顧客じゃない」と一蹴されてしまう。

メンバーに共感し始めるサラが下した決断とは

　なぜマッケーブ社を標的とし、すでに市販されている薬の何を知らしめる必要があるのかー。イーストのメンバーの一人で、元医師のドクによると、ドクの妹がマラリア予防のために同社の薬を飲んだ後、脳障害を起こして自殺し、因果関係を証明するために同じ薬を飲んだドク自身も脳機能に異常を来したという。だが、数日後の記者会見でマッケーブ社の副社長は自身に問題がないことをアピール、イーストは一時解散する。

　サラとしての生活から日常に戻っていたジェーンだが、しばらくしてマッケーブ社の副社長が、自身に脳障害が起きていることを発表すると、同社との契約を取り付けたシャロンから、再びイーストへの潜入捜査を命じられる。残る標的2社を探り出すように、と。

　こうして二度、三度とサラに変身し、イーストのメンバーたちと共に過ごす時間が長くなるにつれ、サラは彼らに共感し、リーダーのベンジーに惹（ひ）かれ始める。そんなある日、イーストの最後にして最大のテロ計画を阻止すべく、潜入指令が下る。任務か正義かの狭間で揺れるサラは、ある決断をする...。

若手フィルムメーカーが実際に放浪生活を体験して脚本化

　本作を手掛けるのは、大学時代からの友人同士である、主演のマーリング（製作・脚本）と監督のザル・バトマングリ（脚本）の若手フィルムメーカー・コンビ。サンダンス映画祭で大絶賛された『Sound of My Voice』に続く本作は、実際に放浪生活を体験するなどして物語を書き上げたという。テレビシリーズ『トゥルーブラッド』で知られるスカルスガルドや、『JUNO/ジュノ』で妊娠したティーンエイジャーを演じたペイジなど、主要キャストも若手実力派がそろっている。製作には、名匠リドリー・スコットが名を連ねている。

（松浦 庸夫）