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STAP細胞、何がすごい? iPS細胞との違いは?

 2014年02月18日 10:30

 多くの研究者が、生涯に一度は論文を発表したいと憧れる英科学雑誌「Nature」に、筆頭著者として同時に2本の論文(2014; 505: 641-6472014; 505: 678-680)を発表した理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の小保方晴子さん。30歳という若さと女性研究者という物珍しさから人となりばかりが注目された結果、肝心の研究成果であるSTAP細胞が何なのか、どこがすごいのかが、いまひとつ分からないという状況を生んでいる。ここでは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)との違いを含め、STAP細胞がナニモノなのかを解説する。

多能性って何?

 STAP細胞のSTAPは「stimulus-triggered acquisition of pluripotency(刺激惹起=じゃっき=性多能性獲得)」の頭文字で、刺激によって多能性を獲得した細胞がSTAP細胞ということになる。だが、これだけでは刺激って何? 多能性って何? ということになり、ますます分からない。これを理解するためには、私たちが生まれてきた過程に立ち返る必要がある。

 多くの生き物では、精子と卵子が出合って生まれる、受精卵という一つの細胞が分裂・増殖し、最終的に皮膚や筋肉、神経といった細胞へと変化(分化)していく。どの細胞へ分化するかの方向性は胎児の早い時期に決まり、それ以降、決まった細胞から分裂した細胞は全てその運命を受け入れざるを得ない。つまり、皮膚になるよう運命付けられた細胞が途中から神経になることはできない(と信じられてきた)のだ。

 多能性というのは、体をつくるどんな細胞へも分化できる能力のこと。最初のうちはどの細胞もこの能力を持っているが、分化の方向性が決まったほとんどの細胞はこの能力を失うことになる。自然に存在する多能性を持った細胞は、受精卵由来のES細胞(胚性幹細胞)など、いくつかの細胞に限られる。

iPS細胞とどう違う?

 ところが、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学・山中伸弥教授のiPS細胞は、この常識を覆し、分化した細胞にも多能性を与えることに成功した。

 iPS細胞は、遺伝子操作によって細胞内でたった4種類のタンパク質の生産量を増やすだけという実にシンプルな方法だったのだが、シンプルさという点でSTAP細胞はその上をいく技術だった。細胞を、弱酸性の培地で30分間培養するだけで、多能性を与えることができたのだ。つまり、弱酸性という刺激だけで、どんな細胞へも分化できる多能性を獲得した細胞がSTAP細胞というわけだ。

 STAP細胞のすごさは、それだけではない。iPS細胞と比べて作製期間が短く、作製効率も良かった。遺伝子操作を加えないという安心感もある。ただし、遺伝子操作を加えないからより安全という意味ではなく、応用に向けての安全性評価はiPS細胞同様、慎重になされるべきだ。

 また、STAP細胞が現状では生後1週間ほどの若いマウスに由来する細胞からしか効率的に得られない点や、人の細胞での成功がまだ報告されていない点は、今後の課題だろう。

多くのメディアであいまいに報じている点とは?

 説明が膨大になるため、ES細胞、iPS細胞、STAP細胞といった多能性細胞にどういった価値や応用性があるのかの解説は他のメディアに譲るが、最後に、多くのメディアであいまいに報道されている1点だけに触れる。それは、STAP細胞自体は、ES細胞やiPS細胞とは違い、幹細胞ではないという点だ。幹細胞は自分で増殖できるが、STAP細胞は自分だけではほとんど増殖できず、2週間ほどで死滅してしまう。

 ただし、小保方さんらの研究チームは、STAP細胞から異なった性質を持つ2種類の幹細胞をつくり出し、どちらの幹細胞も多能性を持つことを、今回の論文で証明している。

(サイエンスライター・神無 久)

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