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2015年から医療費負担が増える人も―神戸大リウマチ教室

 2014年03月24日 06:00

 関節リウマチの治療に使われる生物学的製剤は高額のため、「高額療養費制度」の対象となる患者が少なくない。この高額療養費制度の見直しが、厚生労働省で2015年1月からの実施を目指して進められている。1月30日に開催された神戸大学の整形外科リウマチ教室「2014年、今年のリウマチ治療の展望」では、高額療養費制度の見直しのポイントについて同科の三浦靖史准教授が解説した。

年収770万円の人には厳しい負担増に

 厚労省によると、高額療養費の支給額は年々右肩上がりに推移し、2001年度の8,312億円から2010年度には1兆9,789億円と、10年間で2倍以上に増えている。この深刻な保険料と公費負担の増加に対応しながら所得の低い人の救済を図ることが、高額療養費制度見直しの理由だ。「負担能力に応じた負担」、つまり、払える人にはより多く負担してもらい、払えない人の負担を軽減するという方向性で進められている。

 具体的には、現行の「一般所得者(年収約210万~770万円)」を細分化し、年収370万円以下では月単位の自己負担上限額を5万7,600円に引き下げる。また、現行の「上位所得者」(年収約770万円以上)についても細分化し、年収約770万~1,160万円とそれ以上に分けられ、それぞれ月単位の自己負担上限額が引き上げられる。

"上位所得者=お金持ち"ではない

 三浦准教授は「現状より負担額が減る人と増える人に分かれることは確実。年収770万円強の世帯の負担額の増大は深刻な問題になるのでは」と懸念している。

 「関節リウマチを発症する年齢は40歳代が最も多い。配偶者が40~50歳代で企業の役職者であれば年収770万円を超える世帯も少なくない。"上位所得者=お金持ち"であるかのように見えますが、年収770万円はボーナスを月収4カ月分と仮定した場合に手取り月40万円程にしかなりません。月単位の上限額が複数回該当でも9万3,000円となると、厳しいと感じる人が多いのではないでしょうか」

 また、2008年の高齢者医療制度改革の中で、75歳以上は1割、70~74歳は2割と定められたが、現状は"政治的都合"による特例措置によって、70歳代前半も1割に凍結されている。これを本来の2割負担とすることが検討されているという。

 三浦准教授は「高額な治療薬を必要とする関節リウマチ患者の負担軽減が、治療に関わる医療従事者たちの望み。しかし、残念ながら費用負担増となる人も増えそうです」とまとめた。

(長谷川 愛子)

神戸大学 整形外科リウマチ教室
 神戸大学整形外科では、関節リウマチ患者が自分の病気についての理解を深め、より良い療養生活を営めるアドバイスを伝える目的で、2003年から毎月1回、同大学病院で患者教室を開講している。同院に通う人だけでなく、他の医療機関や診療科で治療を受けている関節リウマチ患者、患者の家族、医療関係者など、関節リウマチに関心を寄せる全ての人に門戸を広げている。

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