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リウマチ患者が妊娠する際にも使える薬は?

 2014年04月16日 06:00

 関節リウマチ患者が妊娠する場合、使っている薬によっては中止したり変更したりする必要がある。おなかの赤ちゃんは本来、お母さんにとって"異物"。それを守るため、妊娠中はいくぶん免疫力が低下する。「妊娠中には関節リウマチの症状が軽くなる」といわれていたのはそのためだ。しかし、現在は効果の高い薬を中止するので、妊娠中だからといって症状が軽くなったと感じない人が少なくないという。2月27日に開催された神戸大学の整形外科リウマチ教室「若いリウマチ患者さんへ:就職や妊娠、育児について」では、関節リウマチ患者が妊娠する際に使える薬について、同科の三浦靖史准教授が解説した。

ステロイドの中でも赤ちゃんへの影響少ないプレドニゾロン

 妊娠する場合に最も影響が少ない関節リウマチの薬は、もともと体の中にある副腎皮質ホルモンを模して合成したステロイド薬の一つ、プレドニゾロンやプレドニンなど(一般名プレドニゾロン)だ。これらの薬は関節の破壊を抑える作用は少ないものの、痛みや腫れなどの症状を緩和することができる。また、作用の仕組みから、ステロイド薬の中でも赤ちゃんへの影響が少ないと考えられている。

 ただし、妊娠初期(15週まで)にステロイド薬を使うと、赤ちゃんが口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ=生まれつき上唇や上顎が裂けている状態)になる危険性が若干増えると考えられている。口唇口蓋裂は、日本では500~700人に1人の割合で見られる先天異常だ。

 とはいえ、関節リウマチの治療に使われるステロイド薬の量が少ないほか、もし赤ちゃんが口唇口蓋裂を持って生まれてきても、今は形成外科治療が進歩しているため、あまり神経質になる必要はないと三浦准教授は言う。

アザルフィジンとリマチルは使用できるが...

 関節リウマチの薬のうち、アザルフィジンENなど(一般名サラゾスルファピリジン)は妊娠の際に使っても危険性が低いことが明らかになっている。また、リマチルなど(同ブシラミン)も妊娠中に影響する副作用の報告がない。

 そのため、これらの薬は使うことができると考えられているが、リウマトレックスなど(一般名メトトレキサート=MTX)や生物学的製剤と比べると関節リウマチを抑える作用がかなり弱いため、これらの薬だけで寛解(病状が落ち着くこと)したり、その状態を維持したりすることは難しい場合が多い。

使える生物学的製剤も

 従来は妊娠を希望して出産するまでの治療法は、プレドニゾロンを少量使って症状を緩和をさせることが中心だったが、最近では、MTXを併用しなくてもよく、作用の仕組み的に赤ちゃんに影響しにくい生物学的製剤のエンブレル(一般名エタネルセプト)を使うことも増えてきた。

 エンブレルは妊娠が分かった時点で原則として使用を中止するが、プレドニゾロンだけでは症状のコントロールが難しい場合、妊娠中でも使用を再開してもよいという。これは、これまでの使用実績の中でエンブレルが妊娠に及ぼすリスクが少ないことが明らかになっていることによる。

 また、昨年に発売された生物学的製剤のシムジア(一般名セルトリズマブペゴル)も、作用の仕組み上、赤ちゃんに影響しにくいことが明らかになっている。「今後、使用実績が増えていく中で、また一つ治療選択肢が広がることになるでしょう」と三浦准教授は述べた。

(長谷川 愛子)

神戸大学 整形外科リウマチ教室
 神戸大学整形外科では、関節リウマチ患者が自分の病気についての理解を深め、より良い療養生活を営めるアドバイスを伝える目的で、2003年から毎月1回、同大学病院で患者教室を開講している。同院に通う人だけでなく、他の医療機関や診療科で治療を受けている関節リウマチ患者、患者の家族、医療関係者など、関節リウマチに関心を寄せる全ての人に門戸を広げている。

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