メニューを開く 検索

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  2つの学会で異なる高血圧の基準、どっちが正しい?

疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」一覧

2つの学会で異なる高血圧の基準、どっちが正しい?

 2014年04月21日 10:30

 日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が今月、検査の基準値を見直し、血圧では収縮期(最大)血圧を147mmHg以下、拡張期(最小)血圧を94mmHg以下とした。しかし、これでは日本高血圧学会の正常値(それぞれ130未満、85未満)と大きな差が出るため、多くの人が混乱してしまう。なぜ2つの基準値が生まれたのか、さらにどちらが正しいのか―。両学会の声明などから探った。

メディアは「基準緩和」と報道

 新基準は、人間ドックを受診した150万人から健康な1万~1万5,000人を選んで、それぞれの結果から男女差や年齢差も含めた正常範囲を算出したもの。血圧は収縮期が147以下、拡張期が94以下とされた。つまり、この値を上回らないと「高血圧」にはならないということだ。

 これまでは日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(指針)が定める「正常血圧」(130未満、85未満)と同じだったが、新基準の範囲はガイドラインだと二段階上の「軽症高血圧」に分類される。そのため、各メディアからは「基準緩和へ」などと取り上げられた。

 これに対し、日本高血圧学会は「多くの方が、正常値が複数存在することで混乱しているのではないか」との懸念から、声明を発表している。

「超健康な人の範囲=この範囲なら超健康」ではない

 ここで重要なのが、新基準範囲が持病などのない「超健康な人(スーパーノーマル)」の検査値から統計学的に割り出していること。つまり、"超健康な人はこの範囲だった"のは間違いないが、だからといって"この範囲なら超健康になれる"とはならないのだ。

 一方、日本高血圧学会の分類は、「高血圧」なら心臓病や脳卒中、腎臓病などにかかりやすくなる値、「正常血圧」ならその値まで下げることでこれらの病気にかかる危険性が減ると、研究結果から確認されている。

 そのため、日本高血圧学会の声明では「人間ドック学会の基準範囲は、検査値の基準としては極めて妥当な方法に基づくものだが、高血圧の基準値の考えとは異なる」とし、血圧の管理には医師の診察や高血圧治療ガイドラインを参照するよう求めている。

 どちらが正しいとはいえないが、基準範囲は超健康な人の値を示しただけなのに対し、高血圧学会のガイドラインは病気にかかる危険性を考えた分類になっているといえる。

基準範囲の最終変更は数年後

 人間ドック学会と健保連も、報道を受けて声明を発表。基準範囲の要旨に「基準範囲はいわゆるスーパーノーマルの人はこの検査値の範囲であることを意味するものであり、専門学会がガイドラインで示している疾患判別値とは異なる」などと注釈が示していたことを強調した。

 また、現在のデータは単年度の結果であり、今後は数年間にわたって追跡調査し、その結論を取りまとめるため、「今すぐ学会の判定基準を変更するものではない」と説明している。

 なお、今回の新基準範囲では血圧だけでなく、中性脂肪が血液1デシリットル当たり30~149ミリグラムから、男性で39~198、女性で32~134、悪玉のLDLコレステロールが60~119から、男性で72~178、31~45歳の女性で61~152、46~65歳の女性で73~183、66~80歳の女性で84~190などと変更された。こちらも、日本動脈学会のガイドラインの基準値(中性脂肪150以上、LDLコレステロール140以上で脂質異常症)とは異なっている。

(編集部)

ワンクリックアンケート

円安水準を更新。円安で何を思う?

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  2つの学会で異なる高血圧の基準、どっちが正しい?