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国内で多剤耐性インフル初検出―広島県

 2014年06月11日 10:30

 広島県総合技術研究所保健環境センターの高尾信一氏らは、2013~14年のシーズンに、作用の仕組みが異なる薬が効きにくい多剤耐性インフルエンザウイルスが検出されたと、6月5日発行の国立感染症研究所の速報に報告した。これまでに札幌市を中心に「タミフル」と「ラピアクタ」が効かないウイルスが出ていたが、今回のものは「リレンザ」や「イナビル」の効き目も低下していたという。同様の耐性ウイルスは2009年に米国で報告されていたが、日本での検出は初のこと。

タミフルの効きにくさ1万2,000倍

 高尾氏らによると、今回の多剤耐性ウイルス(A/H1N1pdm09ウイルスのH275Y/I223R二重耐性変異株)が検出されたのは、広島県内に住む70歳代の女性。2014年3月31日にインフルエンザを発症し、ラピアクタ(一般名ペラミビル)を点滴したが回復せず、4月4日に吸引するタイプのイナビル(同ラニナミビル)で回復したとの経過が示されている。この女性が治療を受けた病院では、その後に同様の耐性ウイルスの広がりは確認されていないという。

 今回、検出された耐性ウイルスは、札幌市を中心に地域で流行したタミフル(一般名オセルタミビル)とラピアクタ(同ペラミビル)が効かない「H275Y変異」だけでなく、「I223R変異」もしている二重変異株。広島県内の女性はイナビルで回復したが、イナビルやリレンザ(同ザナミビル)の効き目も低下している。

 高尾氏らの検査では、今回の耐性ウイルスは通常のウイルスと比べ、薬の効きにくさ(50%NA活性阻害濃度)がタミフルで約1万2,000倍、ラピアクタで約5,500倍、リレンザとイナビルで約20倍。札幌市などで流行した「H275Y変異」と比べても、それぞれ約50倍、約70倍、約15倍だったという。

 なお、2009年に米ペンシルベニア州に住む14歳の少女から検出された同様の耐性ウイルスは、通常のウイルスと比べてそれぞれ約9,000倍、約1万3,000倍、約20倍と報告されている。

現時点で流行の可能性低いが薬の選択に注意

 高尾氏らは「米国からは、2009年の検出報告以降、H275Y/I223R二重耐性変異ウイルスの報告はない。日本国内の同ウイルス検出率も0.007%と極めて低く、現時点で流行の可能性は低いが、今後も高度耐性ウイルスの出現に注意が必要」との見方を示している。

 また、タミフルなどのインフルエンザ治療薬(NA阻害薬)を使用する際の注意点として、タミフルとラピアクタ、リレンザとイナビルはそれぞれ作用の仕組みが同じなので、薬剤耐性が疑われる場合、作用の仕組みが異なる薬へ速やかに切り替えることが重要と説明。さらに、薬を選ぶの際には、各地域での耐性ウイルス検出状況を参考にするよう呼びかけている。

(編集部)

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