子宮頸がんワクチン接種率、米国でも伸び悩み
2014年07月30日 10:30
有害事象(ワクチンとの因果関係がはっきりしないものも含めた副反応=副作用)の問題から、日本では国が積極的に接種を呼びかけることが一時中止となっている子宮頸(けい)がんワクチン(ヒトパピローマウイルス=HPV=ワクチン)だが、米国では接種率が伸び悩んでおり、当局の担当官は頭を抱えているようだ。米疾病対策センター(CDC)が7月24日に発表した報告によると、2013年の11~12歳の接種率は女子57%、男子35%程度という。CDCの担当官は「これまでと同じ接種率を報告しなければならず、失望している」と、いら立ちを隠せない様子。米国では、禁煙や高血圧の治療、各種がん検診と同じ位置づけで子宮頸がんワクチンを重要との方針が示されており、CDCは対象年齢の子供たちに医師らが強く推奨するよう呼びかけている。
5割台から伸びない女子、3割台にとどまる男子
米国では2007年に女子への子宮頸がんワクチンを導入し、2011年には13~17歳女子の1回目の接種率が5割を突破したものの、翌年に53.8%、最新の2013年でも57.3%と微増にとどまっている。また、全3回を接種した割合は37.6%と低い。米国では尖圭(せんけい)コンジローマなどの予防のため男子にも接種しており、こちらの接種率(1回目)はさらに低い34.6%(2013年)だった。
当局は、同時期に接種する3種混合ワクチン(破傷風・ジフテリア・百日ぜき)や髄膜炎菌ワクチンの接種率が8割近くなことなどから、2013年頃には子宮頸がんワクチンの接種率も80%以上を達成すると予想していた。そのため、現在の状況に当局は大きく落胆しているようだ。
なお、政府諮問機関は今年2月、オバマ大統領に提出したがん予防策に関する年次報告で、緊急対策が必要な項目として子宮頸がんワクチンの接種率向上を取り上げている。この中で、具体策として「医療現場での推奨漏れを減らす」「親、保護者、本人の子宮頸がんワクチンに対する理解の向上」「接種を受けやすい環境にする」などを示した。
接種させない理由「知らなかった」が女子トップ
では、なぜ子宮頸がんワクチンの接種率が上がらないのか。CDCは週報で、対象年齢の保護者に聞いた「子供に接種させなかった理由トップ5」を紹介している。
女子
- 知らなかった......15.5%
- 必要ない......14.7%
- 安全性・有害事象の懸念......14.2%
- 勧められなかった......13.0%
- 性的に活発でない......11.3%
男子
- 勧められなかった......22.8%
- 必要ない......17.9%
- 知らなかった......15.5%
- 性的に活発でない......7.7%
- 安全性・有害事象の懸念......6.9%
CDCは、医師から勧められなかったことが接種を受けない理由に含まれていることを重視している。接種を受けさせた親の7割以上が勧められていたのに対し、受けさせなかった親で勧められたのは女子で52%、男子で26%にとどまっていたという。
そのため、医師に対し「全ての対象年齢の子供に三種混合ワクチンや髄膜炎菌ワクチンと同じように、子宮頸がんワクチンの接種を強く推奨することが望ましい」とし、健康診断のたびに医師らが接種状況を確認することで接種率を向上させることができるのではないかと提案している。
一方、日本でも注視されている子宮頸がんワクチンの安全性については、「導入から8年の観測で6,700万回以上の接種が行われているが、安全性への重大な懸念はない」と説明している。
「親は子供をHPV関連がんから守る重要人物」
この調査結果を受け、CDCは新たなリーフレットも作成。「毎年2万7,000人がHPVに関連したがんにかかっています。これは、20分に1人がかかっていることになります」「10歳代前半で百日ぜきや髄膜炎のワクチンと同時に接種すれば、HPVへの感染も防げます」といった文言が、イラストとともに記されている。その上で「親や医療者は、子供をHPVに関連したがんから守る重要人物」と呼びかけている。
(編集部)