スポーツで貧血、汗とともに鉄分失う
2014年08月22日 06:00
暑い季節のスポーツは大量の汗を伴う。水分の補給も大切だが、一緒に失われた鉄分を補うことも忘れてはいけない。スポーツ選手、特に女性で多く見られる鉄欠乏性貧血について、慶応義塾大学スポーツ医学研究センター(神奈川県)の石田浩之准教授(内科)に聞いた。予防の基本は、やはり食事でしっかり鉄分を取ることだ。
剣道やバスケでは別の原因も
貧血は血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態をいう。赤血球の成分の9割以上を占めるヘモグロビンは、鉄とタンパク質でできている。ヘモグロビンを作るためには鉄分が欠かせない。
1日に2~3リットルの汗をかくと、体内から約1~2ミリグラムの鉄が失われる。スポーツ選手が貧血になりやすいのは、大量の汗をかくことによって相当の鉄が失われることが主な原因だ。
石田教授は「女性の場合は月経があるため、男性に比べて貧血になりやすく、特に陸上長距離走の選手では頻度が高くなります」と話す。
剣道、バスケットボール、バレーボールなど、足底部(足の裏)を繰り返し打ち付けたり踏み込んだりするスポーツでも、選手の足底部にある血管の赤血球が衝撃によって破壊され、貧血につながる。この場合、一時的に血尿が見られるという。
疲れやすければ検査
鉄欠乏性貧血の予防には、まず食事で十分な鉄を取ること。日本人の鉄の所要量は10~12ミリグラム。鉄は小腸から吸収されるが、その割合は10~15%と低く、食品によっても吸収率が異なる。赤身肉など動物性食品からは比較的吸収されやすいが、野菜類はビタミンCを一緒に取ることで吸収率が高まる。
貧血の経験や偏食などがある場合は、不足している鉄をサプリメント(栄養補助食品)などで補充することも可能だ。ただし、サプリメントに含まれる鉄の量は少なく、大量に飲むと胃腸障害が生じる恐れがある。
ヘモグロビン値が血液1デシリットル当たり12グラムを切ると治療が必要になる。治療は鉄剤が有効だが、長期間にわたって漫然と服用していると、肝臓病や糖尿病を引き起こす可能性もある。
「疲れやすい、それまでこなしていた練習についていけないというスポーツ選手は貧血の可能性があります。一度検査を受けることを勧めます」と石田准教授は助言している。
(編集部)
2013年9月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)