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米国で承認された"針なし注射器"とは?

 2014年08月25日 10:30

 "いくつになっても注射が苦手"という人は少なくないだろう。でも、もし注射から針がなくなったら―。そんな夢(?)のような注射器「PharmaJet Stratis Needle-free Injection System」が、米国で8月15日に承認された。ただ、使えるのは18~64歳に特定のインフルエンザワクチンを接種するときだけ。また、ある程度の痛みも伴うようだ。開発元の米ファーマジェット社は、医療従事者の針刺し事故が回避できる点を強調している。

70年代にも類似器を使用

 "針なし注射器"は画期的に感じるかもしれないが、予防接種の世界では「ジェット・インジェクター(jet injector)」として以前から存在しており、1970年代には日本でも「ハイジェッター」「鉄砲注射」などと呼ばれ、BCGなどの予防接種に使われていた。しかし、神経を傷つける危険性が高いことなどから使われなくなり、90年代には完全廃止。米国でも2011年に使わないよう呼びかける勧告が出されたばかりだ。

 今回の"針なし注射器"も仕組みは基本的に「ハイジェッター」と同じで、先端からワクチンの液が高圧で発射され、皮膚を貫通して筋肉内に到達するというもの。大きさや形、空気を使わない点(スプリング式)、使い捨てである点などが異なる。

 なお、2010年にはデング熱ワクチンの接種を目的に、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)がとしてファーマジェット社などに、この機器の開発費用1,550万ドル(約16億円)を提供している。

「針が怖くてワクチン拒否」が大人の24%

 ここで気になるのが痛いのかどうかだが、承認に向けて行われた臨床試験(「Lancet」電子版)では、従来の注射よりも痛みや腫れなどを訴える人が多かったとされている。過去の報告でも同じような結果が出ているが、一方で、ネットで公開されている動画や記事などでは、接種された人が痛みをほとんど感じていない様子。プロモーション用に我慢をしているのでなければ、人によって痛みの感じ方が違うのかもしれない。

 ファーマジェット社が"針なし注射器"の利点として強調しているのは、医療従事者の針刺し事故が防げる点だ。注射器を扱う医療従事者は、誤って注射針を自分に刺してしまう危険と常に隣合わせ。米国ではインフルエンザワクチンの接種を薬剤師が薬局で行っているが、小売り薬局の集計だけでも10万件の接種につき3.62件の針刺し事故が起きているという。医師や看護師、薬剤師だけでなく、使用済みの針を回収する清掃業者もこうした危険がある。

 また、針刺し事故はケガだけでなく、患者の血液などが付いているため、肝炎ウイルスやHIV(エイズウイルス)などに感染する恐れもある。米国の感染症制御当局である疾病対策センター(CDC)が2001年に発表したデータでは、医療従事者の針刺し事故による感染リスクは、B型肝炎ウイルスが1~62%、C型肝炎ウイルスが1.8%、HIVが0.3%とされている。

 さらに同社は、「針が怖い」という理由でワクチンを接種しない大人が24%に上るとの推計を紹介。"針なし注射器"がインフルエンザワクチン接種率の向上に貢献できるのではないかとの期待を示している。

(編集部)

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