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新型出生前診断の精度、6カ国1.5万人で検証

 2015年04月08日 06:00

 妊婦の血液から、おなかの中にいる赤ちゃんの染色体異常を調べる新型出生前診断は、2013年4月に導入された国内でも科学的・倫理的な議論が続いている。これまで高齢妊婦などでの精度は確認されていたが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のメアリー・ノートン氏ら国際共同研究グループは、6カ国1.5万人の一般妊婦で検証した結果、ダウン症の検出精度は超音波などの標準検査よりも優れていたと、4月1日発行の英医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(電子版)に報告した。

18歳以上の一般的な妊婦で

 出生前診断はこれまで、超音波検査や母体血清マーカー検査で引っかかった場合に確定診断として羊水・絨毛(じゅうもう)染色体検査が行われてきた。しかし、前2つの選別検査は精度が低く、流産につながる危険性がある羊水・絨毛染色体検査を受ける人を極力減らすため、より精度の高い選別検査が求められていた。

 そこで登場したのが、新型出生前診断などと呼ばれている「無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)」だ。母体の血漿中セルフリーDNA(cfDNA)をMPSという方法で解析する、つまり、母親の血液検査だけで染色体異常が判定できる。精度は99%以上だが、これは高齢や遺伝的に染色体異常が起こりやすい妊婦の場合で、年齢が若かったり、遺伝的な問題がない妊婦の場合は精度が落ちるとされていた(関連記事:注目される新出生前診断、受けるときには慎重に)。

 ノートン氏ら研究グループは今回、6カ国35施設で妊婦健診を受けた18歳以上の女性1万8,955人に対し、妊娠10~14週(3~4カ月)に従来の検査(超音波検査+母体血清マーカー検査)と新型出生前診断の両方を実施。どちらが正確だったかを検討した。なお、被験者には従来の検査結果のみを知らせたという。

 最終的に1万5,841人(年齢中央値30.7歳、検査時の妊娠週数中央値12.5週)を解析した結果、新型出生前診断の陽性率(ダウン症を正しくダウン症と判定できた割合)は100%、偽陽性率(ダウン症でないのにダウン症と判定した割合)は0.06%で、陽性的中率(ダウン症と判定された中で本当にダウン症だった割合)は80.9%。従来の検査(それぞれ78.9%、5.4%、3.4%)に比べ、大幅に精度が高いことが分かった。

 この結果からノートン氏らは、一般的な妊婦でも新型出生前診断は従来の検査より高い精度でダウン症を検出できると結論している。

専門医団体は慎重な姿勢

 こうして、一般的な妊婦でも高い精度が確認された新型出生前診断だが、各国の専門医団体の姿勢は慎重だ。

 日本産科婦人科学会などは、高齢妊娠やダウン症児を妊娠したことがあるなどのリスクが高い妊婦を対象とするものの、医師が妊婦へ安易に勧めるべきではないなどとの指針を提示。米国でも米国産科婦人科学会などが同様の妊婦にのみ行い、通常の妊婦健診に組み込むことは推奨しないとの見解を示している。

 今回の結果についても英米の専門家は、全ての妊婦に検査が有効なことが示されたとする一方、法整備を含めて社会的・倫理的・技術的な問題が解決されていないと指摘。たとえ精度が高いことが証明されても、制度として導入することはあり得ないとしている。

(編集部)

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