メニューを開く 検索

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  難病への認識、自分も家族も「なる可能性低い」が8割

疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」一覧

難病への認識、自分も家族も「なる可能性低い」が8割

 2015年04月24日 10:30

 毎年5月5日は「世界肺高血圧症デー」。この日を前にバイエル薬品は、全国の20~69歳の男女1,000人に慢性血栓塞栓(そくせん)性肺高血圧症や他の難病に関する意識調査を行ったが、8割の人が「自分も家族も難病になる可能性は低い」と回答するなど、難病を自分のこととして捉えていない現状が明らかになった。慢性血栓塞栓性肺高血圧症は、だるさや疲れやすさ、息切れなど日常生活の中で軽く見られがちな症状に潜んでいる場合があることから、同社は「まずは病気をよく知ることが大切」と提案。慶應義塾大学医学部(東京都新宿区)の川上崇史医師(循環器内科)は「難病は決して人ごとではない。自身や周囲の病気の前兆を見逃さないように」と助言している。

「肺」だけど実態は心臓病

 体の中の血液は、心臓の左心室から大動脈を経て全身の臓器などに送られた後、大静脈から右心房に戻っていく。この体循環で失われた酸素などを補給するため、今度は右心室→肺動脈→肺→肺静脈→左心房の道をたどる肺循環がある。左心房に戻された新鮮な血液は、再び左心室から全身へと送られるのだ。

 肺高血圧症は、肺循環の際に血管の通りが悪くなり、肺動脈へかかる圧力が上がる病気。結果的に右心室の負担が大きくなり、右心不全を引き起こす。「肺」の字が付いているが、実態は心臓病だ。比較的若い人で発症し、男性よりも女性の方が多いとされている。

 慢性血栓塞栓性肺高血圧症はそのうちの一つで、英名の頭文字を取って「CTEPH(シーテフ)」とも呼ばれている。肺の血管の内側に血の塊(血栓)が詰まって(塞栓)肺と心臓の血液の流れが悪くなり、息苦しさや身体のだるさ、胸の痛みなどさまざまな症状が現れるのが特徴だ。国から「難病」に指定されているものの、血栓を取り除く手術やカテーテル(中が空洞の細く柔らかい管)で血管を広げる治療、最近では肺血管を拡張させる薬の治療効果も上がっており、難病ながら治療法がある病気となっている。

9割近くが「知らない」

 ところが今回の調査では、同じ難病でもパーキンソン病関連疾患やクローン病、潰瘍性大腸炎を知っている人は半数を超えたのに対し、慢性血栓塞栓性肺高血圧症について「知らない」と回答した人が9割近くを占めた。

 難病全体に対するイメージを聞いたところ、多くの人が「社会生活が困難」「明確な治療法がない」「かかったら治らない」などと回答。国が指定する難病(特定疾患)患者の治療費の一部を公費で負担する「特定疾患医療受給者証」を持つ人は85万人を超え、日本人の約150人に1人が難病と闘っているにもかかわらず、どの難病に対しても「自分も家族も難病になる可能性は低い」と考える人は77.1~89.1%と多く、慢性血栓塞栓性肺高血圧症についても8割を超えた(最も多かったのはアミロイドーシス)。

 この結果を受け、慶應大の川上崇史医師は「難病の中には、早期発見と早期治療で患者さんのQOL(生活の質)が著しく向上する病気もあります。難病は決して他人事ではなく、日常生活の中のだるさや息切れなどに難病の前ぶれが隠れていこともあります。それらの症状が長く続く場合は注意して、病気を見逃さないようにしてほしい」と訴えている。

(あなたの健康百科編集部)

ワンクリックアンケート

円安水準を更新。円安で何を思う?

トップ »  疾患・健康ニュース「あなたの健康百科」 »  難病への認識、自分も家族も「なる可能性低い」が8割