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大人も眼科検診受けて! 失明が36%減少―専門医が試算

 2015年04月27日 06:00

 子供の頃に定期的に受ける眼科検診だが、コンタクトレンズを使っている人は別として、大人になってから受けたことがないという人も多いのでは? そんな大人が眼科検診を受けた場合、日本人の失明が36%減る可能性があるという試算が発表された。4月16~19日に札幌市で開かれた日本眼科学会の会合で報告した杏林大学大学院医学研究科の山田昌和教授(眼科)は、失明が減るのは緑内障などの病気がいち早く発見できるためで、費用と効果のバランスも良好だったと説明した。

大人の受診率は先進国で最低

 視覚障害は増えつつあり、2030年には国内だけで200万人に達するとみられている。主な原因は緑内障、糖尿病網膜症、変性近視、加齢黄斑変性、白内障。この5つで全原因の4分の3を占めるという。年齢は半数が70歳以上で、60歳以上となると7割を超えることから、高齢者を中心とした対策が必要だ。

 視覚障害の予防策として近年、期待する声が高まっているのが大人の眼科検診。山田教授によると、原因の病気の発症から視覚障害の発生まで期間が比較的長く、有効な治療法があることから、目の病気は検診に適しているという。しかし、その医学的な効果やコストと効果のバランスについて十分に検討されていないようだ。

 眼科検診のうち眼底検査についてはかつて、高齢者が対象の基本健診で医師が必要と判断した場合に行われていたが、特定健診が導入された2008年以降はほとんど実施されなくなった。血糖値、脂質(コレステロールや中性脂肪など)、血圧、腹囲(ウエストサイズ)の4項目全てが異常値で、さらに医師が必要と判断した場合にのみ対象となる仕組みに変わったからだ。

 もともと日本の眼底検査(糖尿病患者対象)実施率は先進国の中で最低とされてきたが、08年以降はさらに、それまでの約100分の1に落ち込んだという。現在、眼科検診を独自に行っている自治体は、全市町村の数%でしかない。

緑内障による失明45%減も費用対効果は微妙

 山田教授らは今回、視覚障害の主な原因となっている5つの病気を対象とした大人の眼科検診について、それぞれの病気の発見率や失明の減少率、費用と効果のバランスなどを割り出した。

 その結果、糖尿病網膜症では27%が眼科検診によって発見されるようになり、重症になってから病院に駆け込む人の数は検診を受けていない人の半分に減ることが判明。失明してしまう人も17%減ると見積もられた。さらに、費用と効果のバランスは非常に良好だったという(1QALYのICER=約94万円)。

 他の4つも、失明は緑内障で45%減、加齢黄斑変性で41%減、変性近視で24%減、白内障で4%減だった。費用と効果のバランスは白内障で良かったものの、緑内障でギリギリ、加齢黄斑変性と変性近視では良くない結果となった。

失明30%減には40~70歳で5年ごと

 5つ全体で検討したところ、失明を36%減少させることができると予測。失明を30%減らすためには、大人の眼科検診を40歳で開始し、70歳まで5年に1回行う必要があることも分かった。この検診プログラムの費用と効果のバランスは、非常に良かったという。

 現在、眼科医団体の日本眼科医会を中心に、公的に眼科検診を導入するよう働きかける動きが活発化している。今回の研究成果は、導入に向けた重要なデータになるだろう。

(あなたの健康百科編集部)

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