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シジミチョウの幼虫、蜜でアリを操っている可能性―神戸大ほか

 2015年08月13日 06:00

 庭先でもよく目にする小さなチョウのシジミチョウだが、その幼虫はアリに蜜を与える代わりに天敵から守ってもらうという、お互いに利益を得ながら生きる「相利共生」の関係を築いていると考えられていた。ところが、神戸大学と琉球大学、米ハーバード大学の共同研究グループは、シジミチョウの蜜にはアリを自分のところに引き留めるよう操作する働きがあり、アリはシジミチョウに操られている可能性があることを発見した。蜜には統合失調症の薬と同じ作用があったという。詳細は、7月31日発行の科学誌「Current Biology」(電子版)に掲載されている。

活動減って攻撃的に

 姿も形も全く異なるシジミチョウとアリだが、シジミチョウの幼虫は糖とアミノ酸が豊富な蜜をアリに与え、その蜜に集まるアリは幼虫の周囲にとどまってハチなどの天敵から守ることが知られている。この関係は長い間、異なる生き物がお互いの利益を交換し合う「相利共生」の代表例とされてきた。

 ところが、シジミチョウの幼虫はアリがいなければ敵に襲われるが、アリは蜜がなくてもほかのエサを探せば生きていける。つまり、互いの利益が釣り合っているとは言えない。この利益の不釣り合いな関係は「相利共生」でないのではないかと考えた研究グループは、シジミチョウの一種のムラサキシジミとアミメアリを使って調査を行った。

 その結果、ムラサキシジミの幼虫から蜜を与えられたアリは、歩行活動が減って幼虫の元に長くとどまるようになり、より攻撃的になることも発見した。

ドーパミンの働き抑えて行動を操作か

 人間と同じくアリには、快感や意欲に関わる脳内物質ドーパミンがあるが、それが多過ぎると統合失調症などになり、逆に不足すると無気力や無関心になる。蜜を与えられたアリの脳を調べると、ドーパミンの量が減っていた。また、統合失調症の薬(レセルピン)をアリに与えたところ、蜜を与えられたアリと同じように歩行活動が減ったという。このことから研究グループは、シジミチョウの幼虫の蜜にはドーパミンの働きを抑え、アリの行動を操作していることが考えられると結論した。

 論文の筆頭著者である神戸大学大学院理学研究科の北條賢・特命助教は「アリにとって幼虫の蜜を摂取することがどれほど利益のあるものなのか、さらに研究を進めたい」としている。

 なお、同大学の別の研究グループは同時期に、ハチがクモを操っていることを発見。科学誌「Journal of Experimental Biology」(電子版)に報告した。

(あなたの健康百科編集部)

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