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適度な運動はリウマチ患者にも重要―神戸大リウマチ教室

 2015年08月28日 10:30

 健康に良いとされる強めの運動・身体活動だが、健康な人でも1日のうちたった0.7時間(5%)しか行っていないという。6週間寝たきりで過ごすと、筋力が25%下がり、骨量が減り、歩行機能が低下するほか、精神・心理的なストレスが増え、睡眠のリズムが崩れるなど、さまざまな悪影響を及ぼすことが明らかにされている。健康維持に適度な運動が大切なのは、関節リウマチ患者にとっても同じだ。今年6月に開催された神戸大学の整形外科リウマチ教室「関節保護と運動療法」(司会=同科・三浦靖史准教授)では、同大学リハビリテーション部の理学療法士、松野凌馬氏が、健康維持に必要な活動量や運動の目安について解説した。

まずは毎日歩きましょう

 厚生労働省「健康づくりのための身体活動量の基準2013」において、日常生活で体を動かす量の考え方の基準がメッツ(METs)を用いて示されている。メッツとは身体活動の強度を表す単位で、座って安静にしている状態が「1メッツ」。身体活動・運動を行った時、安静状態の何倍のカロリーを消費しているかを表している。

 18~64歳の人では「3メッツ以上の身体活動を1週間に1時間当たり23メッツ行うこと、具体的には、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分行う」、65歳以上の人では「強度を問わず、身体活動を1週間に1時間当たり10メッツ。具体的には、横になったままや座ったままにならなければどんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分行うことが望ましい」とされている。

 「関節リウマチ患者さんに負担の少なく適した身体活動として勧めているのは、2~4メッツの身体活動です。リハビリテーションのセラピストがしばしば目標としてお勧めする"旅行(乗り物あり)"は2~3メッツ。高齢者に人気があるゆっくりした動作の"太極拳"は3~4メッツで、運動強度としてもちょうどよく、趣味としても取り組みやすいと思います」

 「毎日実践しやすいものとしては散歩がお勧め。ゆっくりした歩行(時速3キロ)が2~3メッツ、普通の歩行(時速4キロ)が3~4メッツです。1日の歩数は1万歩、70歳以上の人では7,000歩も一つの目安ですが、つらいときには歩数を減らし、楽にできる活動をプラスするのもよいでしょう」と松野氏は言う。

 歩くときのポイントは、かかとからしっかり着地すること。歩幅はできるだけ大きく、前屈みにならないようしっかり前を向いて腕を大きく振るようにするとよい。

 その他に松野氏は、関節の動かせる範囲を維持する関節可動域訓練を取り入れることを勧める。

 「リウマチ体操を日常に取り入れるとよいでしょう。10回くらいを目安にしてゆっくりとできるだけ大きく動かすようにしましょう。体操する前に関節を温めると効果的なので、お風呂上がりに行うことをお勧めします」(松野氏)

激しい運動はNG?

 関節リウマチ患者は激しい運動は避けた方がよいのだろうか。松野氏は激しい運動を行った場合の影響についての研究結果を紹介。負荷がかかる関節が人工関節ではないこと、運動プログラムに耐えられないほどの心臓病がないこと、重い合併症がないことなどを条件に、自転車エルゴメーター(自転車型トレーニング器具)20分、サーキット運動20分、スポーツ20分から成る「RAPITプログラム」を週2回、2年間実施した関節リウマチ患者では、実施しなかった患者に比べて筋力、持久力、骨量が増加、関節破壊の程度には違いがなかったという。

 松野氏は「自分にとって無理のない範囲で、旅行や適度な運動を楽しんで充実した生活を送ってください」とアドバイスした。

(長谷川 愛子)

神戸大学整形外科リウマチ教室
 神戸大学整形外科では、関節リウマチ患者が自分の病気についての理解を深め、より良い療養生活を営めるアドバイスを伝える目的で、2003年から毎月1回、同大学病院で患者教室を開講している。同院に通う人だけでなく、他の医療機関や診療科で治療を受けている関節リウマチ患者、患者の家族、医療関係者など、関節リウマチに関心を寄せる全ての人に門戸を広げている。

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