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野球肘を防ぐ「YKB-9+」、セルフチェックも紹介

 2016年03月02日 14:00

 成長段階にある学童野球(少年野球)の選手にとって、怖いケガの一つが野球肘。近年は、指導者や医療者が予防について本格的に取り組み始めており、投球制限のガイドライン(指針)なども提唱されている。そうした中、横浜市スポーツ医科学センターでは、少年野球クリニックを定期的に開催し、野球肘や野球肩にならないためのプログラム「YKB(Yokohama Baseball)-9+」の普及啓発を進めている。同センターリハビリテーション科の坂田淳講師(理学療法士)に、予防法や野球肘のセルフチェック法などについて聞いた(関連記事:子供の野球肩・肘が4割減! 予防プログラム「YKB-9」)。

小4以上は要注意!

 坂田講師らが横浜市港北区の学童野球選手を対象に実施した調査によると、1年間に肘の痛みが発生する選手の割合は24%とおよそ4人に1人、一度ケガをしたことがある選手では実に41%が再発しているという。また、初めて肩や肘に痛みは小学4年生以上で急増することが分かっている。

 肩や肘をひとたび痛めてしまうと、投球練習を休まずに治すのは難しい。段階的にリハビリを行い、投げ始めるまでにほぼ1カ月、全力投球できるまでに少なくとも2カ月はかかる。痛みを感じるのに無理をすると、悪化して肘の関節がぐらぐらして安定しなくなったり、手術が必要になったりすることもある。

 ボールを投げる時、肘にはどれくらい負担がかかっているのだろうか。坂田講師は「硬式球の個数に例えると、プロ野球選手では150個分、良いフォームの学童野球選手では60個分。良くないフォームの学童野球選手では、120個分の負担がかかる」と説明する。痛んだ肘では投球動作の負担が大きいこととともに、良いフォームで投げることがとても重要であることがよく分かる。

知っておきたいセルフチェック

 肘の痛みとひとくちにいっても、痛みがどんな理由で発生しているのかはさまざま。肘の内側(小指側)が痛いときには、靱帯(じんたい)が肘の内側の骨を引っ張るために骨が割れている(ひびが入っている)可能性がある。実際、肘の内側に痛みが出た選手のうち、骨に異常があった割合は9割弱に及ぶという。「小学4年生以上で肘の内側が痛くなっていたら、骨の異常を疑う必要がある。骨が割れていると放置しても治らない。重症化する前に早めに検査を受けてほしい」(坂田講師)

 一方、肘の外側(親指側)に起こる骨の異常は、肘関節の中で骨と骨がぶつかるために起こる。しかし、レントゲンなどの画像検査で骨に異常があっても痛みの自覚症状がない選手が多い。そのため、気付かず放置してしまって重症化し、手術が必要になることもあるのが難しいところだ。

 こうした肘の異常は、セルフチェックで把握できるという。力こぶを作るように肘を強く曲げたとき、手首と肩の間に入る指の本数が左右で同じかどうか、手のひらを上に「前へならえ」をして両腕の肘の高さをそろえたときに、手の高さをチェックして左右差があれば要注意だという。もちろん、肘を伸ばしたときや曲げたときに痛かったら投球は厳禁だ。

 こうした日常のセルフチェックとともに、「年に1度は地域で行われている野球肘検診を受けるなど、積極的なケガ予防策を講じてほしい」と坂田講師はアドバイスする。

ケガは"治す"前に"しない"のが一番!

 ケガをする原因には、フォームが悪いだけでなく、下半身のバランスが悪い、肩や股関節が硬い、姿勢が悪いといったものがある。ケガをしないためには、丈夫な体を作ること、そのためには日々のストレッチやトレーニングが大切だ。

 そこで、坂田講師らが考案したのが「YKB-9」と、肩周囲のプログラムなどメニューを修正・厳選した「YKB-9+」。ボールを投げる上で必要な体を作るストレッチとトレーニングで構成されており、週2回程度続けることでケガの発生が半減することが、坂田講師らによる調査結果から得られている。

 横浜市スポーツ医科学センター少年野球クリニックでは、肩、肘、股関節の柔軟性や姿勢をチェックしたり、肘関節の超音波検査でケガの有無を確認したりしたのち、YKB-9+を実際に体験しながら学ぶことができる。さらに、ハイスピードカメラで投球フォームをチェックし、フォームの問題を改善するストレッチやトレーニングの方法も教えてもらえるという。所要時間は3時間。後日、測定結果と連続写真となったフォームも返送され、野球少年にとって至れり尽くせりなプログラムだ。

 野球少年たちのオアシスとも言うべき少年野球クリニックの開設は、上の子がケガで通院している親御さんから数多く寄せられた「下の子がケガをしないためにはどうしたらいいのか知りたい」との要望が発端だ。対象は小学生と中学生(2016年4月より高校生も実施)。個人参加用の日程とチーム参加用の日程が定期的に組まれている。ケガ予防やフォームチェックなどを目的に、横浜市だけでなく、幅広い地域から来訪しているという。坂田講師らは野球肘ゼロを目標に取り組んでおり、YKB-9+が広く実践されることを願っている。

長谷川愛子

◆参加しよう! 少年野球クリニック―横浜市スポーツ医科学センター
 肩や肘に痛みを訴える少年野球選手を一人でも減らすことを目的に、選手自身や指導者が直接学べる教室スタイルの講座を開設している。チームメイトと一緒に、保護者やコーチと一緒に、高学年であれば選手一人で受講できる。詳細は公式ページ参照。

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