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コメで乳児の尿のヒ素濃度が倍に―米調査

 2016年04月27日 06:00

 日本人の食事に欠かせないコメが、最近、欧米諸国では不遇の時代を迎えている。健康に有害なヒ素が他の食品に比べてコメに多く含まれているというのがその理由だ。特に乳幼児にコメやコメ製品を与えると発達などに影響する可能性があるとして、欧州では今年1月、米国では4月にコメやコメ製品が規制されることになった(関連記事)。そんな中、4月25日発行の米国の医学誌「JAMA Pediatrics」(電子版)に「コメを食べていた乳児では、食べていなかった乳児に比べて尿中のヒ素濃度が倍だった」とするニューハンプシャー州で実施された調査結果が掲載された。調査を実施した米ダートマス大学医学部疫学のマーガレット・カラガス氏らは「重要な発達段階にある乳児ができるだけヒ素にさらされないよう、なんらかの対策を講じる必要がある」と主張している。この報告を機に米国でコメへの風当たりがさらに強まりそうだ。 

ライスシリアルでヒ素濃度最大に

 コメを主食とする日本では、離乳食もお粥でスタートするのが一般的だが、実は米国でも離乳食としてコメやコメ製品が広く使われている。しかし最近、欧米諸国で乳幼児にコメやコメ製品を与えることを規制する動きが出てきている。その理由は、コメに含まれるヒ素だ。ヒ素は土や水に含まれており、ほとんどの野菜や魚、肉でヒ素が検出されるが、水田で育つコメは他の農産物に比べて発がんや子供の発達への影響が示唆されている「無機ヒ素」を吸収しやすいとされている。このことから、昨年9月にスウェーデンでは「6歳未満の乳幼児にコメやコメ製品を与えるべきでない」とする勧告が発表され、さらに今年1月からは欧州全体で、4月からは米国でコメやコメ製品に含まれる無機ヒ素の上限値が設けられることになった。ただ、米国で実際に乳幼児がどの程度コメやコメ製品を食べているのか、またコメを食べている乳幼児の体にヒ素がどの程度蓄積しているのか調査されたことはなかったという。

 今回、カラガス氏らは、2011年から14年にかけて759人ニューハンプシャー州で出生した乳児759人を1歳の誕生日を迎えるまで追跡した。その結果、約8割の乳児に1歳になるまでにコメを主な原料とする乳児向けライスシリアルを食べた経験があることが分かった。また、1歳時点の調査で1週間以内にコメ製品を食べていた乳児は43%、白米を食べていた乳児は13%、玄米を食べていた乳児は10%を占めていたという。

 さらに、1歳時点で尿検査を受けた乳児129人の尿中のヒ素濃度(1リットル当たり)を調べたところ、コメを食べていなかった乳児では2.85マイクログラムだったのに対し、白米または玄米を食べていた乳児では5.85マイクログラムとほぼ倍だった。また、ライスシリアルを食べていた乳児では尿中のヒ素濃度が9.53マイクログラムに達していたことも分かった。

 この結果について、カラガス氏らは「特定の地域で実施された調査に基づくもので、水道システムが異なる他の地域には当てはまらない可能性がある」「リンゴジュースなど他のヒ素を含む食品による影響も否定できない」と説明。その上で、「大人に比べて子供の方がコメやコメ製品を食べる機会が多く、また幼い子供はヒ素による発がんの影響を受けやすい可能性がある」として、子供がヒ素をできるだけ摂取しないよう規制が必要だとの見解を示している。

(あなたの健康百科編集部)

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