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世界のがん事情

 2017年01月05日 06:00

 世界的にがんにかかる人は増加しているが、死亡率は低下の傾向が見られる。世界の195の国と地域を対象に32種のがんについて1990~2015年の罹病率、死亡率、生存年数、障害生存年数、障害調整生存年数を集計し、そのデータをGlobal Burden of Cancer 2015として米国ワシントン大学の研究グループらはJAMA Oncology(2016年12月3日オンライン版)で報告した。

がん患者増加の主な原因は高齢化

 同報告によると、2015年のがん患者は全世界で1,750万人、がんによる死亡数は870万人と推定された。

 2005年から2015年にかけてがん症例は33%増加しており、うち16.4%が高齢化、12.6%が人口増加、4.1%が年齢別割合の変化による増加であることが示された。

 国・地域による違いは大きいものの、全世界では男性の3人に1人、女性の4人に1人が生涯のいずれかの時点でがんにかかることになるという。

男性の罹患数は前立腺がん、死亡は気管・気管支・肺がんが最多

 世界で最も罹患数が多かったのは、男性では前立腺がんの160万例。次いで、気管・気管支・肺(TBL)がんの140万例、大腸がんの92万例の順であった。これら3種類のがんで全体の42%を占めていた。

 男性のがんによる死亡で最も多かったのはTBLがんによる121万件。次いで、肝臓がんの57.7万件、胃がんの53.5万件の順であった。

 病気によって失われた年数や損なわれた健康や障害のために失われた健康的な生活の年数を示す障害調整生存年数(DALY)が最も大きかったのは、TBLがんで、次いで肝臓がん、胃がんの順だった。

女性では乳がん、小児では白血病が多い

 女性で最も多かったのは乳がんの240万例で、大腸がんの73.3万例、TBLがんの64万例がこれに続き、これら3種のがんで全罹患の46%を占めていた。DALYも乳がんが最多、次いでTBLがん、大腸がんの順であった。

 小児(0~14歳)のがんで多かったのは白血病。次いで他の新生物、非ホジキンリンパ腫、脳神経系のがんの順。がんによる死亡についても同様であった。

死亡率低下と患者数増加が世界的傾向

 2005~15年に、がん全体で見た年齢標準化死亡率(ASDR)が195カ国・地域中140カ国・地域で減少していたのとは対照的に、がん全体で見た年齢標準化罹患率は174カ国・地域で上昇していた。なお、がん全体で見たASDRが上昇していた国はアフリカ大陸で多かった。

 すべてのがんのうち、2005~15年に死亡率が有意に減少したのはホジキンリンパ腫で、変化率は-6.1%。死亡数は食道がん、胃がん、慢性骨髄性白血病でも減少していたが、明らかな有意差はなかった。

 社会システムや人口増加の変化に伴いがん患者は今後も増加が見込まれる。同報告をまとめた米国ワシントン大学のChristina Fitzmaurice氏は「個別化医療の進展や新しい治療法の登場などで、がんサバイバーの増加を期待させる一方で、医療資源の乏しい国・地域と先進国との格差など問題は山積み状態」とし、「がん予防の試みが十分な成果を挙げるよう、たばこの規制やワクチン接種、運動や健康的な食生活の促進活動などに取り組んでいく必要がある」としている。

(あなたの健康百科編集部)

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