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米国では一般内科医の糖尿病対策が不十分

 2019年10月04日 06:00

 米国では、公的医療保険の加入者を対象に、糖尿病の発症リスクが高い人が生活習慣を改善し、発症を防ぐことを目的とした糖尿病予防プログラムが提供されている。しかし、同国の研究者らが行った調査から、一般内科医が行った糖尿病発症リスクの評価が十分でないため、同プログラムに参加する機会を逸している人が少なくないことが示唆されたという。調査結果の詳細はJournal of General Internal Medicine2019年9月9日オンライン版)に報告された。

糖尿病発症リスクが高い人の90%は自覚なし

 血糖値が正常範囲よりも高いものの、2型糖尿病の診断基準には満たない人では、糖尿病を発症するリスクが高い。米国ではそのような状態を前糖尿病と定義している。

 米連邦政府によると、18歳以上の米国人の3人に1人以上(約8,400万人)が前糖尿病に該当するという。しかし、そのうち90%以上の人は、自身が前糖尿病者であることを認識していないという。

 専門家は、前糖尿病を早期に発見し、減量や定期的な運動などの指導を行うことで、2型糖尿病をはじめ、心臓病、心筋梗塞、腎障害・神経障害といった糖尿病合併症を発症するリスクを下げることができると指摘している。

前糖尿病を検出している一般内科医はわずか25%

 研究者らは、前糖尿病の判定や管理に関する医師の認識を調査。対象は、米国医師会に登録している140万人の一般内科医、研修医、医学生からランダムに抽出した1,000人。

 301人から有効回答が得られ、分析した結果、前糖尿病を検出できている割合は、わずか25%程度にすぎないことが示唆された。そのため、2型糖尿病の治療や管理が遅れている可能性があるとしている。

 また、前糖尿病検査の判定基準である空腹時血糖とHbA1cの値の正答率は、わずか42%だった。前糖尿病の危険因子となる背景(体重、年齢、運動の頻度、人種など)や、前糖尿病を管理するための推奨事項(減量目標値など)に関する回答にも、不十分な点が見受けられた。

糖尿病予防プログラムへの参画を促進すべき

 研究者らは「今回の結果は、2型糖尿病の予防に関するガイドラインや診療方針の変更に、影響を及ぼすだろう」との見通しを示した。その上で、「国民はより多くの保険者に対し、糖尿病予防プログラムへの支援を訴えたり、保険加入者が同プログラムに参加しやすくなるよう、公衆衛生当局に働きかけたりすることが重要だ」と主張している。

 この結果は、日本にとっても他人事ではない。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、2016年に日本の糖尿病有病者数は1,000万人を超え、米国の前糖尿病者に当たる糖尿病予備軍(※)も1,000万人に上るとしている。

 IT技術の進歩により、多くの医療情報にアクセスできるようになった現代では、信頼できる情報を見極めて真のヘルスリテラシーを向上することが、糖尿病予防策の第一歩となりうるといえるだろう。

※ 米国糖尿病学会(ADA)と日本糖尿病学会(JDS)は、前糖尿病および糖尿病予備軍の基準について、それぞれ下表の通り定めている。

表.糖尿病予備軍(日本)と米国の前糖尿病(米国)の判定基準

日本(糖尿病予備軍) 米国(前糖尿病)
基準 ①を満たしかつ②か③を満たす場合 ①~③のいずれかを満たす場合
①HbA1c 6.5%未満 5.7~6.4%
②空腹時血糖値 110~125mg/dL 100~125mg/dL
③経口糖負荷試験2時間値 140~199mg/dL 140~199mg/dL

 (あなたの健康百科編集部)

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