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身近にある毒物―ヒ素やメチル水銀

 2024年04月11日 10:00

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 北海道蘭越町の地熱発電の掘削現場で6~8月、蒸気が噴出し近くの川などから高濃度のヒ素が検出され、地元住民らが体調不良を訴えた。化学物質に詳しい東京薬科大学生命科学部(東京都八王子市)の新開泰弘教授に、ヒ素をはじめ、環境中にあるメチル水銀やカドミウムといった毒物について注意点などを聞いた。

▽土壌や地殻に

 「ヒ素は、土壌や地殻などに存在しています。普段は溶け出すことはなく、地下水を日常的に摂取しているような場合を除けば、大きな問題になりません」。新開教授は、北海道の事故では、温度が高い条件下でヒ素が水中に溶け出たと見ている。ヒ素を短期間で大量に摂取した場合、急性中毒症状の嘔吐(おうと)、下痢、激しい腹痛などが表れる。

 水中や大気中に放出されたヒ素の濃度は環境中で薄まり、次第に低下する。日常生活で地下水を利用している場合は、いったん使用を中止し、公的機関などによるモニタリングでヒ素が基準値を超えないことを確認してから、利用を再開する。

▽体から排出

 メチル水銀は、熊本・新潟県で発生した公害病の水俣病の原因物質。自然界に存在し、食物連鎖で大型の魚に蓄積する。それを人が摂取しても、平均的な食生活なら健康への影響は心配することはない。妊婦については厚生労働省のホームページで、健康に無害で、胎児に影響が出ない摂取量の目安が掲載されている。

 富山県・神通川流域の富山市を中心に起きた公害病、イタイイタイ病の原因はカドミウムだった。カドミウムを大量に摂取すると、腎臓の機能が障害される。その結果、体内のカルシウムバランスが崩れ、骨がもろくなり、痛みが多発する。

 「米などに微量が含まれていますが、国がモニタリングをしています。通常の食生活では健康に及ぼす影響は少ないと考えられます」

 メチル水銀やカドミウムに関して過度の懸念が不要なのは、日本人の平均的な摂取量が許容量より低いことに加え、体に防御機構があるため。毒物を化学的に変化させて水に溶けやすくするなどして、尿とともに排出する。メチル水銀は、体内に取り込まれてから2カ月程度で量が半減する。

 「身近な環境中に毒物があると知っておくとよいです。ただし、過度に恐れる必要はありません」と新開教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)

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 東京薬科大学の所在地 〒192―0392 東京都八王子市堀之内1432の1 電話042(676)5111(代表)

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