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良い睡眠が認知症を防ぐ―原因物質の排せつを促進

 2024年05月02日 10:00

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 最近の研究で、良い睡眠はアルツハイマー病の原因物質が脳にたまることの防止に役立つことが分かってきた。国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)の阿部康二病院長に睡眠と認知症との関係について聞いた。

▽質量ともに良い睡眠を

 アルツハイマー病の原因は、脳に老廃物であるタンパク質「アミロイドベータ(Aβ)」が蓄積され、その毒性により脳が萎縮するためと考えられている。脳からAβを排出し、アルツハイマー病の発症を防ぐ「良い睡眠」とは、睡眠時間と質が保たれている状態を指す。

 睡眠障害のない人の睡眠は「脳が眠る」といわれるノンレム睡眠と、「体が眠る」「脳は起きていて夢を見る」といわれるレム睡眠が交互に繰り返されている。「就寝直後の睡眠前半は深いノンレム睡眠(深睡眠)に陥り、朝方にかけて徐々に浅いノンレム睡眠の回数が増えます。この間、約90分周期でレム睡眠が表れ、後半に向け1回ごとのレム睡眠の時間が長くなり目覚めます」

 この睡眠パターンは、加齢に伴いノンレム睡眠とレム睡眠の時間や深さが低下して睡眠の質が落ちる。「その原因の一つに眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌低下が挙げられ、高齢者の3分の1が睡眠障害に悩まされていると見られている」

▽寝不足は認知症リスク

 最近の研究で、アルツハイマー病患者の大半が睡眠障害のためにAβの排せつが低下することが分かった。Aβは覚醒時に分泌され、就寝中に排せつされる。排せつを促すには、日中に適度な運動をして脳血流や脳脊髄液の循環を保つ必要がある。

 同時に「酸化ストレス」による脳血管の炎症を防ぐことも大切だ。人間は、体内に取り込んだ酸素で食物に含まれる栄養素を燃やしエネルギーを作り出す。酸化ストレスとは、このような酸化作用が過剰になり有害になった状態。

 酸化ストレスを防ぎ認知機能を保つには「良い睡眠、適度な運動、野菜の多い食生活、肥満解消、禁煙などを心掛け、抗酸化作用を持つカテキンを多く含む緑茶を飲む習慣を付けるとよいでしょう」。

 Aβの蓄積は、アルツハイマー病発症の25~30年前から始まる。阿部病院長は「しっかり寝たはずなのに日中うとうとする、といった睡眠障害を自覚する中高年の人は、良い睡眠を心掛けてほしい」と呼び掛ける。(メディカルトリビューン=時事)

   ◇   ◇

 国立精神・神経医療研究センター病院の所在地 〒187―8551 東京都小平市小川東町4の1の1 電話042(341)2711(代表)

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